2015年7月4日土曜日

キューバ映画(2)『疎遠 Lejanía』

アメリカとの国交回復ということで、もう一本、アメリカ、亡命を描いたキューバ映画を。

映画:『疎遠(Lejanía)』
監督:ヘスス・ディアス
制作年:1985年

レイナルドが16歳のとき、両親は親戚とマイアミに亡命した。

両親はレイナルドも連れていくつもりだったが、訳があって息子を連れて行けず、旅立つ。
 
それから10年が過ぎ、突如、母(スサーナ)が姪(アナ)とともに、1週間帰国するという。

連絡をもらったレイナルドは困惑する。

両親に捨てられたかっこうのレイナルドはグレた。盗み、アルコール、親戚との暴力沙汰……

そんな彼も、アレイダとその娘のアレハンドラと出会い、いまは新しい生活を築きつつある。昼は仕事、夜は学校へ行っている。

レイナルドは近々、ボランティアで地方へ3か月でかける予定だった。

母の突如の来訪に出発をどうするか悩む。

帰って来た母は、10年ぶりの家を見て驚く。

もとは豪華な調度品があったが、ほとんどなくなっている。埃だらけの作り付けの棚、簡素な部屋。聞くと、売ったとのことだった。金には困らないようにしてあったはずだが……

母は息子が離婚歴のある子持ちの黒人女性と結婚したことが気に入らない。

その会話を再現しよう。

母: アレイダはお皿洗わないの?
息子: いや、ぼくが洗って、彼女は料理をする。ぼくは買い物係で彼女は掃除係だ。
母:どうして離婚暦のある女の人と結婚したの?
息子:好きになったからさ。悪いの?
母:いえ、そうは言ってないわ。未婚の女の子ならよかったんだけど。
息子:もうそういうことは言わないんだよ。
母:彼女の仕事は何かしら?
息子:研究所で働いている。化学を専攻してる。
母:あら、そうなのね。あなたは子どもとは仲がいいのね。
息子:ああ、まるで自分の子のようさ。
母:ねえ、アレイダって黒人よね?(Aleida tiene pinta, ¿verdad?)
息子:黒人?
母:ちょっと黒いじゃない(medio mulatica)。
息子:それがどうしたの、ママ?
母:なんでもないわ。うちの家族にはいなかったから。
息子:うちの家族って……


10年のうちに息子は、すっかり「革命生活」に同化している。困難はあれども、革命を信じている。

母はそれが信じられない。

(続く)

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