2026年3月9日月曜日

3月9日

中島京子の『夢見る帝国図書館』(文春文庫)を読んでいるのと前後して台北に行ったら春節と重なった。実はすぐその後には二・二八が控えていた。李昂(リー・アン)の短篇集『海峡を渡る幽霊』(藤井省三訳、白水社)の帯には「中島京子氏推薦!」とあって、こういうつながりが嬉しくない人はいないよね。短篇「花嫁の死化粧」は二・二八事件の追悼行事を緊張感のある文体で、まるでカメラで写したかのように追っている。こう言っていいのかどうかわからないが、カメラの「語り」が聞こえてくるような感覚がある。戒厳令下で拘束された政治犯の収容所跡が国家人権博物館に行った。リー・アンは戒厳令が解けたあと、民主化の時代に、バスケスやハン・ガンとも通底する筆致で書いている作家だ。彼女の『自伝の小説』(国書刊行会)は、パドゥーラの『わが人生の小説』(水声社)と「つくり」や目指すところに共通のものがある。東アジアの場合には植民地期とポスト植民地期では言語が異なるので、そのぶん複雑化するのだが。

2026年3月2日月曜日

3月2日

パナソニック汐留美術館で「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」。岸田劉生、柳宗悦、今和次郎、宮沢賢治、松本竣介、立原道造、竹久夢二、磯崎新という固有名詞を与えられ、これらの人名を使って戦前戦後の日本近代美術・建築史を論ぜよ、という問題が解けますか?という話。ただし、この美術館がパナソニックによって運営されていることも考慮しなければいけない。住宅や陶磁器やインテリアの展示品が多いのは、母体の運営方針によるのでしょう。


2026年2月27日金曜日

2月27日

米国はもはやラテンアメリカ抜きには理解できない、たとえ支配者層がどんなに拒もうとしても。これはバッド・バニーのスーパーボウル以降言われていることで、確かにそうなんだろう。ラテンアメリカ抜きのアメリカは今そうなったわけじゃなくて随分前からそうだった。だからこそオバマが大統領ではなくなった瞬間、2017年1月、ホワイトハウスのスペイン語版ホームページは消されたのだ。この前ある人が言っていたが、トランプの就任日は2026年1月3日で、それまではただの序章に過ぎなかったのだ、と。キューバ出身の作家は、キューバには「冷戦」と「冷戦後の世界」の二つの終わりがいっぺんにやってきたのだと言っている。「冷戦」と「冷戦後の世界」の二つの終わりが同時にやってくる。「冷戦後の世界」も「冷戦」の世界を生きてきて、それが二つとも終わりそうだ。終わると言っても終わりを眺めているのではなくて、次の時代に無理やり入らされている。

2026年2月18日水曜日

2月18日

メキシコとキューバのあいだのフライトは、メキシコのアエロメヒコ航空がメキシコシティから毎日ハバナまで飛ばしている。しかし、そう、しかし、なのだが、その飛行機は、ハバナからメキシコシティに飛んでない。どうやらユカタン半島のカンクンに戻っている。つまりハバナで給油することができないので、ハバナから50分から1時間程度のカンクンに飛んで、ぎりぎりメキシコーキューバ間の往来を保っているのだ。こういう手立ては、メキシコ大統領のシェインバウムのキューバ支援策とも連動している。チリもキューバ支援を表明しているものの、LATAM航空は、他の多くの航空会社と同じようにキューバへのフライトを停止している。チリはあくまでユニセフを通じての支援だからだろうか。イギリスやノルウェーは、現状ではキューバ渡航を控えるべきというメッセージを出している。それでも多くのジャーナリストが次々にハバナ入りをしている……

停電のことでは、観光客を途切れさせないようにするため、有力ホテルはいつも通り稼働していて、唯一の高層ビル(Kタワー)の上階ではナイトクラブも営業している。個人での石油輸入も始まっている。

「エル・パイース」(2月15日付)でキューバ出身の歴史学者ラファエル・ロハスが、「これから先の数週間がキューバの将来にとって決定的」だと書いているのだけれども、どういうことを指すのかははっきりしない。

ハバナ沖に停泊している米国の軍艦があるから、1月3日にベネズエラでしたのと同じことをする可能性があるのかもしれない。予測をしているのは島の外にいる人で、中の人はそんなことをしてもしょうがないだろう。でも、たぶん、何が起ころうとも、それまでの通りの生活を続けられる人びとが一定数は確実にいる。

SNSでビルヒリオ・ピニェーラの詩を引用しているキューバ人が何人かいた。「ありとある場所が水浸しのひどい状況なので、カフェのテーブルに座るしかない」。

2026年2月14日土曜日

2月14日

メキシコの新聞「ラ・ホルナーダ」紙ではキューバに関するニュースがまとめられています。2026年2月11日付の風刺漫画はこちら。危機的状況に入っているかもしれません。

2026年2月11日水曜日

2月11日

東京オペラシティ・アートギャラリーでアルフレド・ジャー展。1956年チリ生まれの芸術家。タイムズスクエアのスクリーンに流されたメッセージ。広島で撮影された映像をもとにしたインスタレーション。米国と日本国旗を使った「明日は明日の陽が昇る」。南アフリカ共和国の写真家ケヴィン・カーターの映像物語「サウンド・オブ・サイレンス」。シンプルで、難しくない、そして忘れられないような作品ばかり。

2026年2月8日日曜日

2月8日

Cuadernos Americanosは、スペインの前衛詩人フアン・ラレア Juan Larreaが内戦後にメキシコで関わっていた隔月の文芸誌。編集長はJesús Silva Herzog。1942年に創刊号が出て、そこにアルフォンソ・レイエスが「アメリカ大陸とCuadernos Americanos」という文章を寄せている。

隔月で刊行されていて、年毎に号数がナンバリングされている。1950年第4号を見ると300ページ近い分厚さで、目次にはフェルナンド・オルティスやフリオ・コルタサルの名前も。

全巻揃いではなくて飛び飛びだけれど、81冊2000ドルで売っている。

「Cuadernos Americanos」は書籍の出版もしていて、スペインから亡命していた詩人エミリオ・プラードスの詩集『閉じられた庭』を出している。これはおそらく1946年。

雪の朝、夜空の月のように、灰色の空に白い太陽が光っていた。投票に行って、ここ数日のぞわぞわした落ち着かない気分が楽になった。やれることはやった。選挙は国政だけではない。自治体の選挙もあるわけだし。2月9日の朝、どんな結果になっていても、しっかり起きて仕事に向かうのだ。