2017年4月25日火曜日

愛と戦争の歌

ヘスス・ディアスの短篇集が届いた。




Díaz, Jesús, Canto de amor y de guerra, Editorial Letras Cubanas, La Habana, 1979.

表題作「愛と戦争の歌」では、キューバ人の男とロシア人のマーシャが、ピスカリョフ墓地を訪れる。レニングラードにある記念墓地である。

ネヴァ川、アヴローラ艦、モイカ川、運河、カザン大聖堂、スモリヌイ学院、冬宮殿などの風景の中から、特別な扱いを受けるのがこの墓地だ。
 
キューバ人はキューバに帰る直前だ。

マーシャはそこに展示されている文句をロシア語からスペイン語に翻訳して伝える。

聞いているうちに、その詩がレニングラード封鎖という文脈を超えて聞こえてくる。

「僕はベトナムのことを、有毒ガスのことを、枯葉剤のことを、ナパーム弾のことを、対人地雷のことを、その他無数の洗練された忌まわしい装置のことを考えざるを得なかった。ヤンキー帝国主義は今、ちょうどその瞬間、まさにその瞬間に投下している。1966年10月3日10時15分、ベトナムの英雄的な大地の上に。 」

キューバ人は思い出す。ホテルでインド人がハノイ爆撃に抗議しようと提案していた。世界中で同時刻に抗議の声を上げるのだと。東京は夜、オスロは昼、アルジェは午後だ。みんなで同時に叫ぼう。「ノー」と。

チェがフィデルに宛てた手紙の文句が思い出される。「どこであろうと帝国主義のために戦うこと」

ターニャの日記をマーシャは翻訳する。

「サーヴィチェフ一家は死んだ
 全員死んだ。
 ただ一人、ターニャだけが残った。」

 出発の時がきたキューバ人は言い残す。「さようなら、同志よ、祖国か死か、万歳」

この短篇を、ホルヘ・フォルネーは「キューバ社会主義リアリズムの傑作」と評している。

2017年4月16日日曜日

キューバ関連本

最近手元に届いたキューバ関連本

Menton, Seymour, Prose Fiction of the Cuban Revolution, University of Texas Press, Austin, 2014(1975).



Lambie, George, The Cuban Revolution in the 21st Century, Pluto Press, New York, 2010.


Díaz Infante, Duanel, La revolución congelada: Dialécticas del castrismo, Editorial Verbum, Madrid, 2014.


この本では特に、第3章「警察小説、警察国家」に関心。

関連する論文で現在読みかけのものは以下のとおり。

Domínguez, Daylet, "Antiintelectualismo y género policial en Cuba", Encuentro  de la Cultura Cubana, Núm. 53/54, pp.205-212.

内容は、1970年代以降、キューバで隆盛した警察小説について。
ちなみに、この論文が載っているEncuentro誌には、上記のDíaz Infanteの本の第2章が載っている。

これと関連する日本語の本として

チャヴァリア、ダニエル『バイク・ガールと野郎ども』(真崎義博訳)早川書房、2002年。【原題はAdiós, muchachos(1995) 】



ダニエル・チャヴァリア(チャバリーア、Daniel Chavarría)は1933年ウルグアイ生まれで、1969年からキューバに在住している作家。

2017年4月2日日曜日

キューバ文学 エドゥアルド・デル・ジャーノ(Eduardo Del Llano)

最近面白いと思って集めているのが、エドゥアルド・デル・ジャーノ。

彼のことは、モスクワ生まれのキューバ作家ということ、映像の仕事もしていることで知った。

映画『Alicia en el pueblo de Maravillas』(1991)の脚本に参加。 ショートフィルムでは現代キューバを風刺する作品を連作形式で発表している(どれも「ニカノール・オドネル」が出てくる)。

1962年生まれ。ホルヘ・フォルネーが1963年生まれなので同世代。

以下の本を持っている。

Del Llano, Eduardo, Los doce apóstatas(novela), Editorial Letras Cubanas , La Habana, 1994.
---, Obstáculo(novela), Editorial Letras Cubanas, 1997.
---, El beso y el plan(cuento), Editorial Letras Cubanas, 1997.
Nos y otros(Eduardo Del LlanoとLuis Felipe Calvoからなる創作ユニット), Un libro sucio, Ediciones Capiro, Santa Clara, 1998.
---, Tres(novela), Editorial Letras Cubanas, La Habana, 2002.
---, Todo por un dólar(cuento), Serie Miniletras de la editorial H. Kliczkowski, Madrid, 2006. →ショートフィルム「Monte Rouge」のオリジナル短篇所収。
---, El universo de al lado(novela), Editorial Salto de Página, Madrid, 2007.
---, Cuarentena(novela), Editorial Letras Cubanas, La Habana, 2012.
---, Ocio y medio(cuento), Ediciones Isla de Libros, Bogotá, 2013.
---, Bonsai(novela), Ediciones Unión, La Habana, 2014.
---, Omega 3(cuento), Editorial Letras Cubanas, 2015. →ショートフィルム「Épica」のオリジナル短篇所収。
---, La calle de la comedia(novela), Guanatanamera, Sevilla, 2016.