2018年3月24日土曜日

『ココ(Coco)』

日本では『リメンバー・ミー』というタイトルで公開されている映画。

舞台はメキシコで、テーマは死者の日だからメキシコ映画といってもいい。

英語版でも会話のあちこちにスペイン語が入り混じるので、スペイン語がわかったほうが楽しい。

それにメキシコ人俳優・歌手のホルヘ・ネグレテとペドロ・インファンテへの言及もあった。

見ている感じとしては、アメリカの多分カリフォルニアのメキシコ系大家族に生まれた男の子(ミゲル)、つまりアメリカ育ちの男の子に対して、一族のメキシコ性を意識させている物語のようだった。

ミゲルの振る舞いの北米性がやたらに強調されている。

設定は現世と死者の国の往還の物語なのだが、主題歌の「リメンバー・ミー(Recuérdame)」には、"移住する(emigrar)"という言葉が使われている。

メキシコを離れてアメリカに行ってしまった自分のことを忘れないで(リメンバー・ミー)、というメッセージが込められているわけだ。

ガエル・ガルシア・ベルナルが声を演じているHéctorという重要な男の名前。字幕ではヘクターと表記されていたが、エクトルと発音されていたような気がする。

『シェイプ・オブ・ウォーター(La forma del agua)』、『ナチュラル・ウーマン(Una mujer fantástica)』、そして『リメンバー・ミー(Coco)』と、この春は「ラテンアメリカ映画」がたくさん届いている。

2018年3月11日日曜日

近況

昨年12月16日、下北沢のB&Bでボラーニョ・コレクション完結記念トークがあった。こちら。B&Bはこのイベントのすぐ後に新しい場所に移転しているはずだ。

その時の内容が『図書新聞』3340号(2018年2月24日)に掲載された。

独立映画鍋のイベントにも出かけ、ラテンアメリカの映画人の試みについて話を聞いてきた。

その後、まさしくハリウッドでメキシコ人が撮った『シェイプ・オブ・ウォーター』の公開が始まり、実にタイムリーだった。

そういえば、近頃見た映画では、どれも肝心要のベストシーンが女性(弱者)から男性や男性中心社会に向けられる、真っ当な抵抗・憤激・反論になっている。

マリーナ・ビダルが車の上に乗ったり、パンチングボールを殴ったりするところ。

ミルドレッド・ヘイズが警察署に火炎瓶を投げ込むところ。

そしてイライザ・エスポジート(スペイン語ならエリサ・エクスポシトElisa Expósito)がストリックランドに、****と言うところ。そしてそれをゼルダが「ありがとう」って言ってると解説するところ。

『シェイプ・オブ・ウォーター』はラテンアメリカものの映画としてとても素晴らしい。私が見るところ、この作品の先駆には、ガルシア=マルケスの「大きな翼を持った老人」や「美しい水死人」がある。

特に前者の短編はアルゼンチンのフェルナンド・ビリによって映画化されている。キューバ映画である。

フェルナンド・ビリは昨年12月に亡くなったが、この映画を見たらなんと言ったのだろう。

ギレルモ・デル・トロがギジェルモ・デル・トロと呼ばれるときは来るのだろうか。

2018年3月1日木曜日

ラテンアメリカの情動論

Mabel Moraña, Ignacio M. Sánchez Prado(eds.), El lenguaje de las emociones: Afecto y cultura en América Latina, Iberoamericana, 2012, Madrid.


もう5年以上も前に出ていた論集。

目次を書き写したいが分量が多いので難しい。

編者のイグナシオ・M・サンチェス氏が序文を書き、その後にメキシコのロヘル・バルトラRoger Bartraの基調論文が続く。題して"La batalla de las ideas y las emociones"。
人類学者(だったかと思う)バルトラさんは多作だが日本語では見かけない。

そのあとは4部構成。

I. Afectividad, globalidad y política
II. Género, afecto y ficción
III. Expresión musical y emocionalidad
IV. Textualidad, afecto y esfera pública

これは是非大学院あたりで読もう。