立教大学のラテンアメリカ研究所の講演会に行ってきた。
東京都現代美術館のチーフ・キュレーター、長谷川祐子さんの話を楽しみにしていた。
講演の企画をされたのは飯島みどりさんだ。東京都現代美術館でラテンアメリカの現代アートを熱心に紹介されていることに注目して、その企画の中心人物を招いたということだ。
講演では、何度も通ったというブラジル、そしてメキシコ(ガブリエル・オロスコ)に焦点を当てて、現代アートをとてもわかりやすく説明してくれた。目から鱗が落ちるような説明の数々であった。
参考になるのは、2008年に出た『ネオ・トロピカリア ブラジルの創造力』という本である。
上記以外で、ラテンアメリカの現代アートについてこれまで参考にしてきた本がある。以前にも紹介したかもしれない。
Speranza, Graciela, Atlas portátil de América Latina: Arte y ficciones errantes, Anagrama, 2012.
長谷川さんの話には、この本に出てくるアーティストたちもたくさん出て来た。本では芸術作品が白黒の写真で小さく載せられているだけなので、隔靴掻痒とした思いに苦しんでいたのだが、講演で色付きの大きな画面で、説明とともに見ることができた。もちろん現物を見に行くのがいいに決まっているのだが。
ラテンアメリカ現代アートでは、昨日の話には出なかったが、日本ではヒロシマ賞を取ったドリス・サルセード(コロンビア)が有名だ。
ブラジルの芸術、とくに建築については、先日ブラジル大使の講演会を聞いたばかりで、植民地時代、帝政、そして現代の流れのなかの建築史を、産業の移り変わりと首都の移転にからめて聞くことができた。
ブラジル・モダニズムの「抽象力」や「構築力」には目を見張るばかりだ。
メキシコの芸術・建築は、土着の神話性を、途方もない抽象性まで高めているような気がする。
またこのような内容の講演会があったら、ぜひ行ってみたいと思っている。
El mundo cambia constantemente.
ラテンアメリカ文学、キューバの文学、カリブの文学などについてメモのようなものを書いています。忘れないように書いているというのもあるけれど、忘れてもいいように書いている。書くことは悪魔祓いみたいなもので、書くとあっさり忘れられる。それがいい。
Escribir es un acto de exorcismo. Escribir cura, alivia.
2015年11月29日日曜日
2015年11月8日日曜日
ボルヘス(1)
調べものがあってAという本を探す。見つかってそれを読み、ふむふむ面白い、貴重な読書体験をした、というようなことがあったとする。
その後、ふと手元にあるボルヘスの本を繙いてみると、ボルヘスがそのAについて言及している。場合によってはAという本の、根幹となる論旨を手短に説明していたりしている。
こういう体験はよくあることではないだろうか。そうか、ボルヘスがとっくにね、というやつだ。
調べものがあって、『ルカノール伯爵』を読んでいた。ドン・フアン・マヌエルによる説話集(1355年)。どの小話もなんとも今日的な話ばかりで笑わずにはおれない。
その後、なぜだかわからないが、ふとボルヘスの以下の本を手に取った。正確にはボルヘス選の短篇集だ。
Borges, Jorge Luis, Cuentos memorables, Alfaguara, 2012.
ここには、ボルヘスがお気に入りの短篇が12篇入っている。1935年に着想したものらしい。
ポー、ブレット・ハート、コンラッド、キップリング、モーパッサン、チェスタトンなど。
百ページ以上ある『闇の奥』がcuento(短篇)に入っているのはまあともかくとして、ボルヘスからこういった作家が出て来るのもそれほど驚くことではない。(ところでたまたま思ったのは、エドワード・サイードはボルヘスを読んでいたのだろうか、ということだが、これはまた改めて考えることにしよう。)
そしてその選集の最後には、なんと「トレドの大魔術師、ドン・イリャンとサンティアゴの司祭に起こったことについて」が入っていた。
この話は前述した『ルカノール伯爵』の11話である。「忘恩」をテーマとする。
ボルヘスは『汚辱の世界史』でもこの作品をリライトしていた(「待たされた魔術師」)。
そうか、ボルヘスがとっくにね……
その後、ふと手元にあるボルヘスの本を繙いてみると、ボルヘスがそのAについて言及している。場合によってはAという本の、根幹となる論旨を手短に説明していたりしている。
こういう体験はよくあることではないだろうか。そうか、ボルヘスがとっくにね、というやつだ。
調べものがあって、『ルカノール伯爵』を読んでいた。ドン・フアン・マヌエルによる説話集(1355年)。どの小話もなんとも今日的な話ばかりで笑わずにはおれない。
その後、なぜだかわからないが、ふとボルヘスの以下の本を手に取った。正確にはボルヘス選の短篇集だ。
Borges, Jorge Luis, Cuentos memorables, Alfaguara, 2012.
ここには、ボルヘスがお気に入りの短篇が12篇入っている。1935年に着想したものらしい。
ポー、ブレット・ハート、コンラッド、キップリング、モーパッサン、チェスタトンなど。
百ページ以上ある『闇の奥』がcuento(短篇)に入っているのはまあともかくとして、ボルヘスからこういった作家が出て来るのもそれほど驚くことではない。(ところでたまたま思ったのは、エドワード・サイードはボルヘスを読んでいたのだろうか、ということだが、これはまた改めて考えることにしよう。)
そしてその選集の最後には、なんと「トレドの大魔術師、ドン・イリャンとサンティアゴの司祭に起こったことについて」が入っていた。
この話は前述した『ルカノール伯爵』の11話である。「忘恩」をテーマとする。
ボルヘスは『汚辱の世界史』でもこの作品をリライトしていた(「待たされた魔術師」)。
そうか、ボルヘスがとっくにね……
2015年11月4日水曜日
キューバ文学(12)ジョアニ・サンチェス その1
ドキュメンタリー映画に『禁じられた声』という作品があるのを知った。
今年の1月、アムネスティ・フィルム・フェスティバルで上映されている。
トレイラーはこちら。
このなかに登場するキューバのブロガーがジョアニ・サンチェス(ヨアニ・サンチェス)である。
※ジョアニ・サンチェスとするのがいいのか、ヨアニ・サンチェスがいいのか迷うが、アムネスティのサイトでは「ヨアニ」となっている。
これまでも少し触れたが、経歴について少しずつまとめてみたい。Wikipediaを参考にしている。
1975年、ハバナのセントロ・ハバナに生まれる。
父親は鉄道機関士。
ハバナの教育大学を卒業後、さらにハバナ大学の芸術文学部へ進んでいる。卒論のタイトルは「圧力のもとの言葉ーーラテンアメリカにおける独裁政権下の文学について」とある。
その後、出版社につとめてから2002年にスイスへ渡り、チューリッヒに2年暮らした。 帰国してから、ウェブを通じての言論活動に専念するようになる。
いくつかのウェブマガジンを経由して、一躍有名になったブログ、ジェネレーション Y (Generación Y) を立ち上げたのは2007年である。おそらくそれを飲み込むようにして、現在の彼女の主戦場であるウェブ新聞"14ymedio"が、2014年5月21日に開始された。英語版はこちら。
サンチェスのブログは引き続き、「ジェネレーション Y」 として、こちらから2007年のものから読むことができる。
(この項、続く)
今年の1月、アムネスティ・フィルム・フェスティバルで上映されている。
トレイラーはこちら。
このなかに登場するキューバのブロガーがジョアニ・サンチェス(ヨアニ・サンチェス)である。
※ジョアニ・サンチェスとするのがいいのか、ヨアニ・サンチェスがいいのか迷うが、アムネスティのサイトでは「ヨアニ」となっている。
これまでも少し触れたが、経歴について少しずつまとめてみたい。Wikipediaを参考にしている。
1975年、ハバナのセントロ・ハバナに生まれる。
父親は鉄道機関士。
ハバナの教育大学を卒業後、さらにハバナ大学の芸術文学部へ進んでいる。卒論のタイトルは「圧力のもとの言葉ーーラテンアメリカにおける独裁政権下の文学について」とある。
その後、出版社につとめてから2002年にスイスへ渡り、チューリッヒに2年暮らした。 帰国してから、ウェブを通じての言論活動に専念するようになる。
いくつかのウェブマガジンを経由して、一躍有名になったブログ、ジェネレーション Y (Generación Y) を立ち上げたのは2007年である。おそらくそれを飲み込むようにして、現在の彼女の主戦場であるウェブ新聞"14ymedio"が、2014年5月21日に開始された。英語版はこちら。
サンチェスのブログは引き続き、「ジェネレーション Y」 として、こちらから2007年のものから読むことができる。
(この項、続く)
登録:
投稿 (Atom)