2020年6月16日火曜日

わたしには夢があった(2)/『ラチェルの歌』


フアン・パブロ・ビジャロボスの『わたしには夢があった』のオリジナル(スペイン語版)が届いた。



Juan Pablo Villalobos, Yo tuve un sueño: El viaje de los niños centroamericanos a Estados Unidos, Anagrama, 2018.

英語版とは違いがある。オンラインのトークで著者が言っていたのだが、このオリジナルにはエピローグとして、Arberto Arce氏の文章が載っている。彼はジャーナリストで、この本が扱っているテーマの専門家である。ビジャロボスにとってこの本は未知の領域を扱っているので、プロの目からも書いて欲しいと依頼したそうだ。これがまた、いい形で機能している。

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このところキューバのスパイ小説を読んでいて、それがひと段落したので、ミゲル・バルネーを読み始めた。

Miguel Barnet, Canción de Rachel, Libros del Asterloide, Barcelona, 2011[初版1969]

Rachelーーレイチェル、としたいのだが、バルネーのインタビュー動画を見たら、ラチェルと言っていた。

この本のことを「テスティモニオ小説」というジャンルだとも言っている。

「歴史のない人」、「公式の歴史には出てこない人」へのインタビューを下敷きに、作品化したものだ。

この本では創作の度合いは高い。ナイトクラブのダンサー6人を統合して、一人の「ラチェル」を生み出し、1900年から1930年くらいまでを語らせている。語りが素晴らしい。

以下のエディションではキューバ生まれのイタリア人、イタロ・カルヴィーノが序文を書いている。



この作品に着想を得て、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェが歌劇を作っている。本はあのエンツェンスベルガーが書いている。さらに調べてみたら、この二人はミゲル・バルネーの『逃亡奴隷』も作品化しているのだった。へえーー、である。

『ラチェルの歌』はキューバ人が映画化している。これも見ておきたいところだ。

2020年6月7日日曜日

わたしには夢があった


この前、バルセロナの大学の先生が催したオンライン・トークショーに参加した。その時のメインスピーカーはメキシコ出身のフアン・パブロ・ビジャロボスである。

話題は、彼が出した「テスティモニオ」である。

スペイン語版は注文したけれどもまだ届かない。手元には英語版しかない。スペイン語版のタイトルが『Yo tuve un sueño』、つまり「わたしには夢があった」という、あの有名なセリフを過去形にしたものである。

英語版は以下のようになっている。

Juan Pablo Villalobos, The Other Side: Stories of Central American Teen Refugees Who Dream of Crossing The Border, Translated by Rsalind Harvey, Farrar Straus Giroux, New York, 2019.



ビジャロボスが自ら中米出身で米国国境を渡った若者たちにインタビューしたものを編集して出来上がったのがこの本である。

本にするために彼が施した処理の一つが、「日記」形式である。ある人物のパートは日記になっているのだが、これは実際にそのインタビュイーが日記を書いていたのではなく、語った内容は日記にするのがいいとビジャロボスが判断したのだそうだ。

本の最後には「Furthe Readings」があって、この国境越えにまつわる米国の戦略、子供達の国際援助団体、中米避難民に関するインフォメーションなどのURLや書籍が紹介されている。

そのうちの一冊が以下のもの。Ebookで入手可能。

Solito, Solita: Crossing Borders with Youth Migrants, Edited by Steven Mayers and Jonathan Freedman,



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『蜘蛛女のキス』を映画館で見た。最終日の最終回だったこともあって、思ったよりも人は入っていた。久しぶりの映画館。