2023年9月15日金曜日

9月15日 近況:3年半ぶりのキューバ

前回キューバに行ったのが2020年2月終わりから3月頭で、この2023年9月の訪問が3年半ぶりだった。

今年の頭にメキシコシティに行った時にも思ったが、海外に行くときに感覚的にこなしていたことがコロナで期間があいてしまったのと、(たぶんこちらの方が大きいが)加齢が原因でできなくなっていたり忘れていたりで、着いてから、ああそうだった!ということがあった。

エアカナダのフライトがなくなってしまった。東京ートロントは復活しているが、トロントーハバナがない。だからアエロメヒコで行った。

往路はメキシコシティで一泊しなくてはならず、午後12時台に着くとはいえ、シティのどこかのホテルなりなんなりに身を落ち着けるのは午後3時を回り、翌朝のハバナ行きが午前11時発だから、どこに行くにも交通渋滞を覚悟しなくてはならないメキシコシティなので、できることは少ない

そもそもアエロメヒコの場合、帰りのメキシコシティー東京のあの深夜便(夜12時前後発)は、乗る前も降りた後も身にこたえる。

東京ーメキシコシティは、往路がおおよそ13時間、復路が14時間。メキシコシティーハバナは往路と復路が2時間半プラマイ10分。

平日の夕方、ハバナの街に人が少ないなと思ったが、そうか、かつてのように人びとは公園のWi-Fiスポットを目指していないのだ。スマホで4Gに繋いでいる。そして1990年に生まれたあのCUC(兌換ペソ)が2020年末をもって消えてしまった。前回訪問時にまもなく無くなると聞いてはいたのだが、いよいよ二重通貨時代が終わり(通貨統一 unificación monetaria)、何がやってきたのか。

何人かの友人はこの3年半の間にキューバを出てしまった。インフレ、燃料不足による停電などで状況は90年代初頭よりも悪い、そして治安も悪化しているというのを聞いて、行く前にかなり構えてしまったのだが、確かにそのように見える面はあったかもしれない。いや、わからない。

こういうのは脅かしすぎになるのが常で、でもそれがそうだと確認するには行ってみなければわからない。少なくともいわゆるラ米の「ビオレンシア」はないという点は変わっていないと思ったが。

夏のカリブはハリケーンがあるので、この時期にカリブ海に出かけるのは控えていたが、もはや行くには時期的にここしかなく、覚悟を決めて行った。

沸騰的暑さは7月より楽になったというのだが、9月に入ってもかなりの暑さで、朝の9時から夕方5時くらいまではきつかった。基本、ハバナは自分の用事がすべて徒歩で回れるから良いのであって、2月から3月なら30分から1時間くらい歩くのが気持ち良いが、今回はそうもいかず、夕方の5時過ぎから、完全に暗くなる8時あたりがゴールデンタイム。

FOCSAのビルはいつ見ても場違いなのか似合っているのか迷ってしまう。ハバナのどこでもそうだが廃墟感が漂って、1階の店舗は半分くらいしかやっていない(ように見える)。




G77プラス中国のサミットがちょうどこの9月15日・16日とハバナで開催されることになっていて、空港から市街までの幹線道路にはその旗が飾られている。日本の商店街の街灯に夏祭りの旗を飾るのとは規模が違うし、この暑さでよくやったものだ。

それにしてもこのサミットに関する日本語の報道は日経新聞がちょっと書いているくらいで、ほとんど見かけない。もちろんキューバの人にこんな国際イベントがもたらしてくれるものはほとんどゼロだろうが、世界に起きつつある状況の中で、先進国の果たしている貢献的な役割は極めて小さく、グローバルサウスという言葉だけが一人歩きして、ノースの人たちは今やこの用語を濫用し戯れている。こうしていつもレッテルばっかりが流布してしまう。自分も気をつけないといけない。

そう、気をつけないといけないというなら、キューバは2021年1月12日にトランプ・米国によってテロ支援国家に指定されているので、キューバに渡航歴があると米国にESTAだけでは入れず、別に査証が必要になる。米国国土安全保障省のHPは日本語でも読めてその辺りのことが書かれているが、旅行代理店でもキューバ渡航を希望する人にはまずこのことが伝えられる。

これはこれで相当に意味が大きい。査証の取得には費用も時間もかかるわけで、若い人や研究者や今後米国に行きたいと思っている人にとってハードルが一気に高くなる。キューバに行ったばっかりに、米国に観光旅行に行くのに数万円かけて査証なんか取りたくはないでしょう。選ぶというのはこういうことで、自販機のジュースをどれにするかのようではない踏み絵を踏まされる。

自分にとって、今回のキューバ渡航によって晴れて米国にESTAでは入国できなくなったことは一つの成果である。いっそのこと、米国人との付き合いにも、米国映画の鑑賞にも、米国小説の読書にも、世界各地のディズニーランドの入場にも、場合によっては米語の発話にも査証を課して欲しいものだ。米国も米国人によるキューバへのアクセスに待ったをかけるべきだろう。プリンストン大学その他多くの大学が保有するキューバ関係のアーカイブを手放すとか。そういえば、ハバナシンドロームの原因がコオロギの鳴き声というのは十分にありえる話だ。テロ支援国家なのだから。ホテル・カプリやナシオナルで起きたらしいのだが、米大使館員はここに住んでいるのかもしれない。

キューバ渡航の場合、出発空港でツーリストカードを確認される。5、6年前に行った時、ラ米各地を回っていく予定だったのでこれを持たずに行って、最後どこで手に入るかなとどきどきしてしまったが、パナマの空港で買った記憶がある。この時は搭乗の際、キューバ人の列とそれ以外の人の列を作らされた。

今回、日本の空港でチェックインの時にこのツーリストカードの「発券日」はいつなのかを聞かれ、どうもそれをシステム上で入力しないと先に進めず、チェックインができないようだったのだが、ツーリストカードに発券日は書いていないので、その場で係員と相談の上、「適切と思われる日」を入力することで解決した。多分どんな日が入力されていても大丈夫だと思う。

さらにさらに思い出してきたが、ハバナの空港でキューバ運輸省の手続きを義務付けられた。入国前、つまり出発する時までに済ませることも可能なのだが、知らなかった。

その場で係員がWi-Fiに繋いでくれて、スマホからいっぱいデータを入力しなければならない。税関申告書とコロナ絡みで健康に関する申告書を兼ねているようで、2022年1月から始まったとのこと。スマホがなかったらどうなるのだろう。空港のWi-Fiではメキシコシティの空港は簡単に繋がり、街中も「メキシコシティの人なら誰でもWi-Fi」というのがあって観光客フレンドリーだ。

以上は手続き的なことを忘れないようにと書いたメモだが、それはともかくも、短い滞在の間に、いつもの通り、あらかじめ連絡を取っていた人と楽しく話をすることができた。知り合ってもう25年くらい経つけどぜんっぜん変わらないよね、白髪が増えた以外は(笑・・・と言われたり、ひょっとして会えるかなと思っていた人にも会えたりした。イグナシオ・セルバンテスのピアノからアルジェリア、アンゴラまであれこれ話したが、あと3日は欲しいと思った。

出版状況は3年半前からほとんど変わっていない。つまり出ていない。コロナ以降もっと悪い。もともとがらんどうの本屋はもっとがらんどうである。




下の本は、雑誌「Pensamiento crítico」刊行50年を記念して開かれたコロックを収録したものだが、出たのは2019年。



キューバの古本ブームというのは確かに一時期あって、時期としては稀覯本を巡るアクション映画の『ナインスゲート』(ポランスキー)の頃だと思う(2002年)。

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出発直前に、こちらの司会を務めた。今年度4月に始まったこの催しもようやく後半戦に入りつつある。しかし土曜日の午後というのは、自分の所属する学会の大会開催日と重なっていまして、それが少々・・・ 

もちろん講演はどれも素晴らしく、拙い司会で申し訳ない。次回は10月14日。若い聴衆がもっと(×10)増えて欲しいのだが、土曜日の15時だから難しいか。