2021年11月6日土曜日

ホセ・マリア・エレディア全詩集

ホセ・マリア・エレディアは19世紀のキューバの詩人(1803-1839)。キューバと言っても、キューバの独立前だからスペイン人。

この人は父親がスペインの役人だったので、スペイン語圏を転々として、生まれたのはキューバだけれども、ドミニカ共和国にもいたし、キューバを追放されて米国にもいたし、メキシコにもいた。没したのはメキシコ。30代で結核が原因。キューバにいたのは6年程度。それなのにキューバの詩人と言われている。

ラテンアメリカの独立に大きく寄与したフリーメイソンだった。この人の人生を見ていくと、19世紀前半にアメリカの大陸部の独立は可能だったが、黒人奴隷の砂糖の恩恵を受けていたキューバで独立が不可能だったのがよくわかる。

エレディアと、女性作家のヘルトゥルーディス・ゴメス・デ・アベジャネーダ(1814-1873)は10歳も離れていない。

そんな彼の全詩集がこちら。

 


Tilmann Altenberg(Edición crítica, con la colaboración de Alejandro González Acosta), Poesías completas de José María Heredia, Iberoamericana-Vervuert, Madrid-Frankfurt, 2020.

2020年に出版されたばかりの本。1045ページほど……

2003年がエレディアの生誕200年で、編者のAltenberg氏はその時に着手したというから、15年以上かけている。2001年にエレディア論(エレディアのメランコリーを論じたもの)を出して、その後はこのエディションに専念されたということらしい。

すでにそれまでにもエレディアの全詩集は出たことはある。1974年のメキシコのポルーア出版で、これが今までに定評があるものなのだろう。

エレディアといえば、花方寿行さんが『我らが大地ー19世紀イスパノアメリカ文学におけるナショナル・アイデンティティのシンボルとしての自然描写』(晃洋書房、2018年)の第3章で彼の有名な詩「チョルーラ神殿にて」や「ナイアガラ」を論じている。

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2021年11月初旬、バルガス=リョサ『ケルト人の夢』の読書会の準備中。