2020年4月20日月曜日

4月20日 フリアン・デル・カサル

今日から授業がはじまった。

その準備を兼ねて、フリアン・デル・カサルの詩を読んでいた。

30年の彼の短い生涯のうち、詩集は3冊出たようだが、そのうち、2冊目が『雪(Nieve)』で、この詩集にはギュスターヴ・モローに捧げられたパートがある。

「我が理想の美術館(Mi museo ideal)」というタイトルのもとに詩がまとめられ、うち10篇は全てソネットである。副題は〈ギュスターヴ・モローの10枚の絵画〉。

最初の詩は「入り口ーーギュスターヴ・モローの肖像画」とあるので、入り口にモローの肖像画が飾ってあるという仕掛けだ。

Rostro que desafía los crueles
rigores del destino; frente austera
aureolada larga cabellera,
donde al mirto se enlazan los laureles.

Creador luminoso como Apeles,
si en la Grecia inmortal nacido hubiera
cual dios entre los dioses estuviera
por el sacro poder de sus pinceles.

De su Ideal divino a los fulgores
vive de lo pasado entre las ruinas
resucitando mágicas deidades;

y dormita en sus ojos soñadores,
como estrella entre brumas opalinas,
la nostalgia febril de otras edades.

この後、実際に10の絵画作品に対応する詩(ようするにエクフラシス)が並ぶ。

モローといえば、サロメだ。去年はモロー展があったので、日曜美術館でもモロー特集があったのを見た。

一番目の部屋に飾ってあるのは、ヘロデの前で踊るサロメである(I.)。

次の絵は流れからして当然、踊ったサロメが褒美として欲しがった洗礼者ヨナカーン(ヨハネ)の首が来る。『出現』である(II.)。

Nube fragante y cálida tamiza
el fulgor del palacio de granito,
ónix, pórfido y nácar. Infinito
deleite invade a Herodes. La rojiza

espada fulgurante inmoviliza
hierático el verdugo, y hondo grito
arroja Salomé frente al maldito
espectro que sus miembros paraliza.

Despójase del traje de brocado
y, quedando vestida en un momento,
de oro y perlas, zafiros y rubíes,

huye del Precursor decapitado
que esparce en el marmóreo pavimento
lluvia de sangre en gotas carmesíes.

カサルがこれらの詩をモローの絵を見ながら書いたとは思うが、キューバにいたのだから、写真か何かで見たのだろう。色合いとかわかったのかな?

カサルはモローへこれらの詩を書簡で送っている。さらには、『さかしま』でモローを書いたユイスマンスにも送っている。

へえーーっていう話のような気がするけれども、パリのモロー美術館(ここは国立の美術館ということだ)にはカサルが送った詩集「Nieve」が所蔵されているという。

あと8篇の詩(タイトルは絵のタイトルでもあるのだが)は、

III.「プロメテウス」
IV.「ガラテイア」
V.「エレーナ」
VI.「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」
VII.「ヴィーナスの誕生」
VIII.「ペリ」
IX.「ユピテルとエウロペ」
X.「ステュンパロス湖のヘラクレス」

そして最後に「栄光の夢」と題された130行もの詩がある。これは長い。

Robert Jay Glickman, The Poetry of Julian Del Casal: A Critical Edition, Volume One, The University Presses of Florida, Gainesville, 1976.から引用した。

この第1巻は詩のみが収められていて(144篇)、第2巻が、第1巻に収められた詩の校注版。第2巻はインターネットでダウンロードできる。

詩集「Nieve」は1891年か1892年に出版されているのだが、その頃同世代のホセ・マルティはニューヨークで「素朴な詩」を書いている。

オスカー・ワイルドが『サロメ』を出版したのも1891年。

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