ガルシア=マルケスが『百年の孤独』を書いた家はメキシコシティのCalle Lomaにある。彼がその後、亡くなるまで住んでいたペドレガルのCalle Fuegoよりも北西に位置する。ペドレガルの家はかなり大きいが、このCalle Lomaにある家は、やや小ぶりだがメキシコシティ郊外に多く見られるような、庭があって、中は素晴らしいはずだが外側から多くを知ることができず(呼び鈴を押すと多分家のお手伝いの方が出てくる)、近くに幹線道路が走っているが少し引っ込んでいて静かで、でもちょっと勾配がある地区だが、白さが際立つことではペドレガルの家と似ている(ペドレガルの家は中に入らないと白さがわからないが)。この家をめぐってガルシア=マルケスの二人の息子が当時を回想するドキュメンタリーが製作された。題して「La casa(家)」。このタイトルは、ガルシア=マルケスが書き残した「家」という作品を意識したもので、この断章には彼が『百年の孤独』なるものを書こうとしていた痕跡が見つけられる。以下の写真は2022年の年末に撮影したCalle Lomaの家で、そのときはなんの目印もない空き家だったが、今後ここも記念館的なものに変わっていく予定だ。亡くなって10年以上が過ぎ、日々過去の人になりつつあるが、どうしてもまだそんな気分にはなれないな。ぼくにとっては優しく接してくれた気の良いおじさんで、まだメキシコに行くと、彼に言われたとおり電話しないといけないなと思ってしまって、それができないのでペドレガルの家に行こうとは思わない。最後にペドレガルに行ったとき、帰り際に家の前で写真を撮ろうとしたが、地区一帯の警備を担当している人にやめておいたら、と言われ(仄めかされて)、確かにそうだと思って撮らなかった。しかし不思議なもので、そのことで逆に、通りを渡った側から見た家の光景を忘れてはならないのだ、と強く自分に言い聞かせたのか、まだ脳裏に焼きついている(ような気がする)。
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