亡命キューバ作家のエリセオ・アルベルトの存在もまた忘れられない。
1951年、キューバ、アロージョ・ナランホに生まれ、2011年、メキシコシティで没した。
アロージョ・ナランホはハバナ市から見て南の方角にある行政地区。レーニン公園のあたり。ホセ・マルティ国際空港の近くでもある。イタロ・カルヴィーノの生まれたサンティアゴ・デ・ラス・べガスも近い。
父親が詩人のエリセオ・ディエゴ(1992〜1994、キューバ生まれ、メキシコ没)。
エリセオ・アルベルトがメキシコに亡命したのは1990年。
ガルシア=マルケスが創設したハバナ(正確にはサン・アントニオ・デ・ロス・バーニョス)のテレビ映画学校でも講師を務めたことがある。メキシコ亡命後も、ガルシア=マルケスとの付き合いは続いていた。ちなみにリチー(Lichi)が彼のニックネーム。
詩人としてのキャリアがあるが、小説家として名を高めた。
その一つが『カラコル・ビーチ』(1998)。これがアルファグアラ小説賞の受賞作になった。アルファグアラ小説賞は1973年から97年まで実施されなかったので、復活第一回の受賞作である。同時に受賞したのがセルヒオ・ラミレスの『海がきれいだね、マルガリータ』。
そしてヘスス・ディアスの『キューバのこと、何か教えて』と同様、1999年のロムロ・ガジェゴス賞の最終候補になっている(最終候補は全部で10作ある。受賞したのはボラーニョ『野生の探偵たち』)。
『私自身への批判的報告』という一種のテスティモニオ(証言)がある。1978年ごろ書かれたらしいが、出版は亡命後の1997年。
この本と、たとえばヘスス・ディアスの『地球のイニシャル(タイトル仮訳)Las iniciales de la tierra』が重なりあう。書かれた時期と出版時期がずれるのも同じで、またディアス作品のほうは主人公が共産党に提出する「自己弁明」が小説の内容である。
この夏は『キューバのこと、何か教えて』と『カラコル・ビーチ』について考えていきたい。
[この項、続く]
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