2019年9月12日木曜日

マヤコフスキーとハバナ(2)

マヤコフスキーの乗った蒸気船は大西洋を18日間で渡り、ハバナに着いた。

1万4千トンの「Espagne」号。

船旅は穏やかだったようである。

「静かな海は退屈だ。18日間、僕たちはとてもゆっくり、まるで鏡の上のハエのように動いた。」
 
「1等の客は好きなところに嘔吐する、2等は3等の上、そして3等は自分の上に。」

1等で旅をするのは商人。国籍はトルコで、英語だけを話し、メキシコに住み、パラグアイとアルゼンチンのパスポートを持ってフランスの会社で働いている。

「奇妙な連中だ」

船内では「Adiós, Mariquita linda」が歌われている。

マヤコフスキーは1等旅客だった。

ハバナに着いた途端に雨が降る。

「これまでに見たことのない熱帯のにわか雨が落ちてきた。雨とは何か?空気にいくらかほとばしる水が混じり合ったもの。熱帯の雨は大量の水にいくらかほとばしる空気が混じったもの。(中略)僕は雨を避け、二階建の商店に逃げ込む。」

すると、そこはウィスキーだらけだった。キング・ジョージ、ブラック・アンド・ホワイト、ホワイト・ホース。

ということは、前のエントリーで引用した詩「ブラック・アンド・ホワイト」はウィスキーの銘柄から取られているのか。その詩の中に「コラリオ colario」という単語があったが、マヤコフスキーによれば、これはハバナで見た花のことらしい。

商店の背後には売春宿や酒場など、港町らしい店が広がっているが、その向こうには「綺麗な、世界で最も豊かな街」がある。しかしその豊かさを所有しているのはアメリカ合衆国であることにも気づく。

たった1日でメキシコのベラクルスへ出発。そして鉄道でメキシコシティへ向かう。駅で迎えてくれたのはディエゴ・リベラである。

「というわけで僕が最初にメキシコシティで知ったものは、絵だったのである」

マヤコフスキーのアメリカ紀行は『僕のアメリカ大陸発見』というタイトルで出ている。スペイン語版は以下の通り。上の引用もすべてこの本からとった。日本語訳は出ていないようである。 (←その後、『私のアメリカ発見』(鹿島保夫訳、和光社)として出ていることがわかりました。)

Vladimir Mayakovski, América, Traducción de Olga Korobenko, Gallo Nero, [出版地不明、出版社はスペイン], 2011.



最後のページにこの本を買った本屋のスタンプが押してあった。Prometeo Libros, Honduras y Gurruchaga。ブエノスアイレスの本屋だ。

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