2016年12月6日火曜日

キューバ映画(12)『ハバナ』(Jana Bokova監督)

1990年、チェコ人の女性監督Jana Bokovaによって『ハバナ(Havana)』というドキュメンタリーがBBCの協力も得て制作された。

1989年より前のキューバ国内を映したものとして極めて貴重である。また、マイアミを訪れたレイナルド・アレナスのインタビューが含まれていることもこのフィルムの価値を高めているようだ。

アレナスの姿は、すでにネストル・アルメンドロスの『インプロパー・コンダクト』(1984)で見ることができる。『ハバナ』で話している内容もほとんど同じである。

キューバの文学者からの引用を挟みながら話は進む。アレナスの「パレードが始まる」、ピニェーラの「山」、ニコラス・ギジェンの「ソン、ナンバー6」、カルペンティエル「種への旅」、レサマ・リマ、カブレラ・インファンテなどが引用される。

インタビューされる作家としてドゥルセ・マリア・ロイナスが出てくる。1902年生まれの詩人がベダード地区の大邸宅の中で孤独に暮らしている様子だ。こんな風に外とは隔絶して死んでいった白人たちは大勢いたのだろうと思った。このシーンだけはYoutubeにある。後半バックに流れるのはエルネスト・レクォーナのCrisantemoだ。

作家パブロ・アルマンド・フェルナンデスも出てくる。 カストロの演説が聞こえてきたり、7月に行われるカーニバルの映像もあるし、その他アフロキューバ文化の音楽や踊り(ルンバ)も見ることが可能だ。

映像は飾り気もなければ工夫もなくて、とても質素だ。『インプロパー・コンダクト』のような政治的主張が中心にあるのではない。とはいえ冒頭はハバナの古いビルで起きた床崩落の話だから気が滅入る。

最後のシーンでハッとした。アレナスの「パレードは終わる」の朗読とともに、ハバナのマレコン(海岸通り)が映されるからだ。

ジュリアン・シュナーベルの『夜になるまえに』を見た人は驚くだろう。アレナスが病院からニューヨークの自宅に帰宅するところとまるで同じなのだ。引用されるところも全く同じ。

朗読の仕方は『夜になるまえに』のハビエル・バルデムよりも慎ましく、映画全体と同じ様に素人っぽい。シュナーベルは間違いなくこのドキュメンタリーを見ただろう。そして同じことをやるしかなかったのだと思う。

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