2015年9月10日木曜日

カタルーニャの本屋

[前項からの続き]

バルセロナの本屋では、カタルーニャ語の本とスペイン語の本が分かれて並んでいる。出版言語が違うのだから別の棚にあるのは当たり前だ。ただこういう二言語の本棚の光景はスペイン語圏ラテンアメリカではあまり見られない。

スペイン語圏のラテンアメリカの書店では、文学コーナーにはまず「Literatura nacional(国民文学)」があり、そこにはそれぞれの国の文学が並んでいる。メキシコの本屋ならメキシコ作家で、コロンビアならコロンビア作家である。

次いで「Literatura latinoamericana(ラテンアメリカ文学)」があって、そこには、自国以外のラテンアメリカ文学の本が並んでいる。アルゼンチンであれば、ガルシア=マルケスは「ラテンアメリカ文学」のところに並ぶ。

そして次に「Literatura universal(世界文学)」がある。ここには、いわゆる日本語で言うところの「外国文学」が並ぶ。彼らから見て違う言語文化圏の文学作品だ。

 この三つの区分にしたがって本を探すわけだが、バルセロナでは、上に書いたように、文学コーナーは「カタルーニャ語」か、「スペイン語(カスティーリャ語)」で分かれ、では「スペイン語」のコーナーには何が並ぶかというと、ラテンアメリカでは区別されていた三つの文学がすべてそこに入っている。

つまりスペイン語で出版された文学作品は、原書が書かれた地域・言語に拘らず、それがすべて「スペイン語」の本であるかぎり、「スペイン語の本」の棚にある。だからその本棚はかなりの数が必要になる。

アルファベット順なので、フアン・ゴイティソロ(Juan Goytisolo)とギュンター・グラス(Günter Grass)が近くにあったりする。もし後藤明生(Goto Meisei)の本があれば、近くに並べられることになる。あらゆる文学が一緒というわけではなくて、古典文学や推理小説は別の棚に並ぶ。

本屋で改めて気づくが、スペイン語を相対化するという意味ではカタルーニャ語の役割は大きい。

以下の写真のように、スペイン・ラテンアメリカ文学をまとめて並べている本屋もあった。ここでも面白いのは、棚の表示が二言語であることだ。






それから日本文学・文化コーナーのある本屋。ラテンアメリカではここまで充実したものを見たことがない。




[この項続く。バルセロナの出版資本のこと、ラテンアメリカの二言語のことへと進む予定]

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