2015年9月5日土曜日

世界文学とラテンアメリカ(バルセロナ編)

世界文学は世界中の文学研究者のあいだで熱っぽい議論を呼び起こしている(と思われる)。

このブログのなかではキューバのロベルト・フェルナンデス=レタマールの論考を紹介した。あの文章は1970年代、キューバ革命の意義とラテンアメリカの今後を見据えて書かれたもので、著者のイデオロギーははっきりしていた。一部ではすでに革命への眼差しは異なるものだったのだが、あの文章には、あのように書かれるべくコンテクストがあったと思う。

さて、スペイン語圏における世界文学論の盛り上がりを示す文献として、出たばかりのものを一冊紹介しよう。それはこちら

Müller, Gesine & Gras Miravet, Dunia(eds.), América Latinay la literatura mundial: mercado editorial, redes globales y la invención de un continente, Iberoamericana-Vervuert, Madrid, 2015.


編者のMüllerさんはケルン大学、Duniaさんはバルセロナ大学の先生である。 表紙のロゴは編者の名前からとっている。

目次はこちら。21人の研究者や翻訳者による論文集。

作家名で言うと、ソル・フアナからカルロス・フェンテス、ジュノ・ディアス、フアン・マヌエル・プリエト、ボラーニョなど。論文タイトルにあがるものではボラーニョが一番多い。

Dunia先生の論考は、「内側から見たブーム:カルロス・フェンテスと文化振興のインフォーマル・ネットワーク」というもので、フェンテスの書簡を材料にしながら、彼が多くのラテンアメリカ作家を世界に紹介するインフォーマルな橋渡しとして働いていたことを実証していくものだ。

その他のものは(全部をきちんと読んだわけではないが)、ブックフェアにおけるアルゼンチン・ブースのイメージ戦略、オランダ、フランス、イギリス、イタリアにおけるラテンアメリカ文学の受容、そしてなんと、インドにおけるラテンアメリカ文学の受容についての文章が二本もある。ラシュディとガルシア=マルケスあたりの共通点からはじまるとして、どのような論になっているのだろうか。

ついでに知ったのだが、コロンビアの作家サンティアゴ・ガンボア(1965〜)は在ニューデリー・コロンビア大使館の文化参事官をつとめたそうである。 古くはオクタビオ・パスがインドにいた話は有名だが。

Dunia先生には世界文学がらみ以外にも多くの仕事があるのだが、それはまた別の機会に紹介したい。

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