キューバの話ばかりではいけない。プエルト・リコの本の話をしよう。全部で4冊。
ひとつめ。
Martínez-San Miguel, Yolanda, Caribe Two Ways: Cultura de la imigración en el Caribe insular hispánico, Ediciones Callejón, 2003.
著者はマルティニークとプエルト・リコの近似性についての論文をどこかで書いていて、それ以来気になる存在である。
最近もウェブ雑誌「80grados」で「カリブで記憶することの困難」という文章を発表している。グレナダ、グアドループ、キューバに関することがとりあげられている。
グレナダの革命に関する記憶、グアドループにおける記憶のハイキング、そして近年のフィデル・カストロの視覚イメージについて、Yolandaさんが読んだ本などを通じて紹介しながら情報を補ってくれている。グアドループの「記憶のハイキング」とは、歴史的親密性の感覚を生み出すために民衆のあいだで行なわれているものらしい。
いずれも、カリブにおけるアーカイブ欠如の問題をどのように乗り越えるかということが問題になっている。
いっぽう、『Caribe Two Ways』では、スペイン語圏カリブ3島(プエルト・リコ、キューバ、ドミニカ共和国)のエクソダスによって生まれた移住文化(la cultura de la migración)が記述されている。
エクソダスは必ずしも島からアメリカ合衆国へ向けてとは限らない。キューバ人のプエルト・リコへの移動も含まれている。
タイトルにあるように、「二方向」に留意しなければならない。
素材となるのは、文学、映画、写真、音楽、グラフィティ、造形芸術である。
ふたつめ。
Rodríguez Juliá, Edgardo, Mapa desfigurado de la Literatura Antillana, Ediciones Callejón, 2012.
この人もほかにたくさん著書があって、どれもプエルト・リコ、カリブの文学、文化をテーマにしている。やはりマルチニークの存在を含めてプエルト・リコを論じようとしている。
この本は評論集で、ぱらぱらめくるとカリブのみならず、ラテンアメリカ文学についての話もけっこう載っているので、比較的軽めの本と見てよさそうだ。
三つ目として、その彼の以下の大作。
Rodríguez Juliá, Edgardo, Caribeños, Editorial del Instituto de Cultura Puertorriqueña, 2002.
巻頭の「Puerto Rico y el Caribe」では、かつての投稿で紹介したフランシスコ・オジェルの絵「El Velorio」を論じている。オジェルを論じてはいるが、絵画論ではなく、プエルト・リコのことをカリブのなかで考える貴重な試論だ。
「1898」というタイトルの短いクロニカもある。
最後。
Pabón Ortega, Carlos, Polémicas: política, intelectuales, violencia, Ediciones Callejón, 2014.
この本は、知識人論への関心から欲しくなったものだ。目次をみたところ、時評集といったもので、プエルト・リコ大学の危機に端を発しての大学論、知識人論、暴力についてのジャーナリズム論集である。
0 件のコメント:
コメントを投稿