11月14日、セルバンテス文化センターで行われた、コロンビアの作家エクトル・アバッド・ファシオリンセの講演会に行った。
講演題目は「コロンビアの狂気を生きのびるには」というもので、大江健三郎の『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』を踏まえているとのことだった。確かどこかで、日本の作家では川上弘美を愛読していると書いている。
医師にして人権活動家であった父親を準軍部隊に暗殺された彼が、和解、氷解というような言葉でその出来事を語るようになるまでに30年が経過している。
エクトルの娘、ダニエラが彼女にとっては祖父のその死をドキュメンタリーにして、それも上映されたようだ。残念ながら見ることはできなかったそれは、「影への書簡(Carta a la sombra)」。
その父との思い出を語ったのが『El olvido que seremos』(2006)。
この本と読み比べられるのは、例えば同じコロンビアの作家ピエダー・ボネット(Piedad Bonnett, 1951〜)である。
彼女は息子を失っている。その経緯を記したものが以下の『名付けられないもの(Lo que no tiene nombre)』(2013)。
この2冊があがれば、弟の死を描いたフェルナンド・バジェホ『崖っぷち』(松籟社)もまた同じ系譜ということか。
毎年リレー講義で1回限りの授業があるが、そこでこのような作家たちをあげて、書けるもの、書けないもの、なぜ書くのか、誰に書くのか、というテーマで話している。上の2冊も翻訳されてほしいものだ。
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