2016年4月6日水曜日

キューバ文学(20)『フェルディドゥルケ』

今回のキューバ滞在で見つけた本のなかに、ポーランド作家のゴンブローヴィッチの『フェルディドゥルケ』がある。ハバナ大学に留学中の学生から現物を見せてもらい、その後運良く手に入った。

スペイン語版の初版はブエノスアイレスで1947年に出ている(アルゴス社)。

この翻訳書の成り立ちについては、「キューバ・アヴァンギャルドとビルヒリオ・ピニェーラ」(『立命館言語文化研究』22巻104号, pp.89-107, 2011)という論文で触れた。

ゴンブローヴィッチ作品のスペイン語訳は、この『フェルディドゥルケ』を含め、スペインのセイクス・バラル社から「ゴンブローヴィッチ叢書」として刊行され、『コスモス』にしろ、分厚い『日記』にしろ、『トランス=アトランティック』にしろ、主だった作品はすべてスペイン語になっている。

今回キューバで入手したのは、キューバの出版社から出た『フェルディドゥルケ』である。

書誌情報は以下のとおり。

Gombrowicz, Witold, Ferdydurke, Editorial Arte y Literatura, La Habana, 2015.

ちなみに、「詩人に抗して Contra los poetas」も収録されている。

翻訳はこれまで刊行されていた、キューバ作家のビルヒリオ・ピニェーラをトップとする翻訳委員会版と同じものである。ただし「キューバ版への序文」をラモン・オンダル(Ramón Hondal)が書いている。

ピニェーラの紹介文やゴンブローヴィッチのスペイン語版序文も載っている。

そして表紙は日本語版(平凡社ライブラリー)と同じ、ブルーノ・シュルツが初版本に描いた装丁用の絵を使っている。



(キューバ版の出版の経緯については、別項で触れる)

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