2016年3月27日日曜日

カリブ研究会(4)英語圏カリブ(Caribe anglófono)

キューバで見つけたカリブ関係の書物、英語圏篇。

Lamming, George, Los placeres del exilio, Fondo Editorial Casa de las Américas, La Habana, 2010.
※翻訳者はMaría Teresa Ortega Satrique、序文はRoberto Fernández Retamar。

バルバドスのジョージ・ラミング(1927〜)はキューバの文化機関「カサ・デ・ラス・アメリカス」の研究部門「カリブ研究センター」の顧問をつとめている。

本書にはシェイクスピア『テンペスト』についての論考が多くおさめられている。

ハッとしたのが、「キャリバンが歴史に秩序を与える」と題された論考である。

エピグラフにエメ・セゼールが引かれている。

そして冒頭にウィリアム・ワーズワースの詩。題して「トゥサン・ルヴェルチュールへ」。1803年に書かれたものだ。

ワーズワースの詩のスペイン語訳は、キューバ人作家エベルト・パディーリャによるものなのだ。

パディーリャは1979年、『イギリス・ロマンス詩集』を翻訳刊行している(Poesía romántica inglesa)が、そこからとられたわけである。

パディーリャがキューバから米国に亡命したのは1980年。1970年に粛清されてからの彼の主たる仕事は翻訳だった。その彼のキューバ時代「最後の作品」がこの『イギリス・ロマンス詩集』である。


フェルナンデス・レタマールの序文では、『テンペスト』のポストコロニアル・リーディングの経緯が触れられている。そして彼はこのラミングの本を、C.L.R.ジェームズの大著『ブラック・ジャコバン』と結びつけている。

まったく忘れていたが、『ブラック・ジャコバン』には「補論」があって、それは「トゥサン=ルヴェルチュールからフィデル・カストロへ」という副題がついている。この副題は重要だ。

まず、「補論」つきの『ブラック・ジャコバン』がでたのが1963年。

そして、エリック・ウィリアムズの『コロンブスからカストロまで』がでたのが1970年。

また、フアン・ボスチの『クリストバル・コロンからフィデル・カストロまで』がでたのがやはり1970年。

ジェームズの本もウィリアムズの本も邦訳はあるが、ドミニカ共和国出身の元大統領でもあるフアン・ボスチの本は邦訳がない。

フェルナンデス=レタマールによれば、ジェームズの「補論」は『ブラック・ジャコバン』のスペイン語版(2003年刊行)には載っていないという(ただし、雑誌「カサ・デ・ラス・アメリカス」の1975年、91号にジェームズの論理の主眼は掲載してある)。

フェルナンデス・レタマールは序文の結びで、カリブ圏の主要な作家たちを列挙している。

ウォルコット、セゼール、C.L.R.ジェームズ、フアン・ボスチ、エリック・ウィリアムズ、フェルナンド・オルティス、リディア・カブレラ、ニコラス・ギジェン、アレホ・カルペンティエル、ジャック・ルーマン、ホセ・レサマ=リマ、ビルヒリオ・ピニェーラ、サムエル・フェイホー、フランツ・ファノン、エドゥアール・グリッサン、カマウ・ブラスウェイト、ジェラール・ピエール・シャルル。

こうしてみると、スペイン語圏の邦訳あるいは紹介が圧倒的に少ない。


さて、カマウ・ブラスウェイトの詩集もスペイン語翻訳されていた。

Brathwaite, Kamau, Los danzantes del tiempo: antología poética, Fondo Editorial Casa de las Américas, 2011.
※編者、序文、インタビュアーはChristopher Winks。
※翻訳者はAdriana González Mateosと、Christopher Winks。

続いて英語圏カリブ詩集2巻本。

Ellis, Keith(Selección, traducción y notas), Poetas del Caribe anglófono, Tomo I, Fondo Editorial Casa de las Américas, 2011.
---, Poetas del Caribe anglófono, Tomo II, Fondo Editorial Casa de las Américas, 2011.

翻訳しているKeith Ellisさんはジャマイカの人らしい。


(この項、続く)

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