2022年7月10日日曜日

7月10日 はじめに(フリアン・デル・カサル)

フリアン・デル・カサルの第一詩集『Hojas al viento(葉を風にのせて)』から。

"hojas"にはページ、紙の意味があるので、「詩を書き記した紙片を風にのせて」とも取れる。

その詩集の一番最初の詩は、「はじめに(Introducción)」というタイトル。


Arbol de mi pensamiento

lanza tus hojas al viento

del olvido, 

que, al volver las primaveras,

harán en ti las quimeras

nuevo nido;

y saldrán de entre tus hojas,

en vez de amargas congojas,

las canciones

que en otro Mayo tuvistes,

para consuelo de tristes

corazones.


頭の中にはいろいろな思考があって、それはさながら一本の樹木である。それが1行目。

2行目のlanza(動詞lanzar)を、ここでは二人称の命令形(arbol=túへの命令)と理解すると、「わが思考からなる樹よ、おまえの葉を忘却の風にまかせよ」となる。注釈本でも、1行目の終わりにコンマが入っているべきとある(コンマがあれば命令形と取ることに迷いはなくなる)。

4行目、季節が巡って春が戻るころ、とある。つまり2行目の葉が風に飛んでいく季節は秋がイメージされているのだろう。

春が戻って、再びその樹木に葉が芽吹くとき、その葉はおまえという樹木の中に、空想という新しい巣を作るだろう。

※ここは文法的にちょっと無理をして解釈。harán(動詞hacerの三人称複数未来形)の主語をtus hojas、目的語をlas quimerasとすると、「葉は空想を作る」となって、その場所がen tiなので、「おまえという樹木の中に」。最後のnuevo nidoは、las quimerasと同格のように解釈して、「空想という新しい巣」。あるいは、5行目までで切って、「それが新しい巣なのだ」とまとめても良いかもしれない。

7-9行目。おまえの新しい葉から聞こえてくるのは、苦しみの嘆き声ではない。それは歌である。

10-12行目。その歌は先の5月(春)に、悲しみに暮れる心を慰めようとして、おまえが歌ったあの歌だ。

10行目のtuvistesは現在ならtuviste。古いスペイン語の用法。




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