2018年5月28日月曜日

カリブの映像作家

ラウル・ペック監督の『私はあなたの二グロではない』を見た。



ジェームズ・ボールドウィンのテキストに基づいて作られたドキュメンタリーである。監督のペックはハイチ出身。

ペックはボールドウィンを15歳の頃から読みはじめたという。

そして続いてこう書いている。

「エメ・セゼール、ジャック・ステファン・アレクシス、リチャード・ライト、ガルシア・マルケス、アレッホ・カルペンティエルと同じように、ジェームズ・ボールドウィンは「私自身」と呼びうる数少ない作家の一人だった。私が知っている世界、私がただの脚注やどうでもいい登場人物ではない世界を描いている作家たちだった。」(出典はこちら

ペックはアフリカやヨーロッパなどを転々としていたようだが、黒人作家やカリブ地域の作家を読んでいたわけである。

ボールドウィンのことでは、彼の小説『ビール・ストリートに口あらば』の映画化が進められていて、その監督はあの『ムーンライト』を撮ったバリー・ジェンキンスだそうである。

『ムーンライト』もカリブ色(キューバ)の感じられる映画だったが、『ビール・ストリート…』ではプエルト・リコが関わってくる。『私はあなたの…』でもプエルト・リコのシーンが少し出てきた。

パンフレットに感想を寄せている新田啓子さんという方も、「カリブの映像作家」という表現でラウル・ペックのことを称えている。
  
キューバのドキュメンタリー「Coffea arábiga」という1968年のショートフィルムも最近見た。DVDで見たが、Dailymotionなどでも見られる。

監督はニコラス・ギジェン・ランドリアン(Nicolás Guillén Landrián)で、詩人のニコラス・ギジェンの甥。

作中でニコラス・ギジェンの詩「緑のトカゲ(Un lagarto verde)」が引用される。緑のトカゲとはキューバ島のこと。

映像はキューバのコーヒー生産の歴史を実験的映像で振り返ったもので、例えば同時期のキューバではサンティアゴ・アルバレスの「Now!」と同系統の映像である。

そういえば、「Now!」ではレナ・ホーンの曲が使われていたが、『私はあなたの…』でも彼女の歌が入っている。

『Coffea arábiga』の音楽はビートルズ(フール・オン・ザ・ヒル)、ジャズ・クルセイダーズ。特にクルセイダーズの音楽がはまっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿