2016年9月2日金曜日

コロンビア映画(1)『Los viajes del viento(風の旅)』

監督はシーロ・ゲーラ。ネット上にはチロ・ゲーラという表記があるけれど、Ciro Guerraなので、シロかシーロでしょう。1981年生まれの、現在35歳。

その彼の2009年の映画が『風の旅』。

監督の出身がセサル県というコロンビア北部で、『風の旅』はそのコロンビア北部、海までを含め、コロンビア・カリブ(El Caribe colombiano)と言われる地方のロードムービーである。

この地方の音楽といえばバジェナート、主たる楽器はアコーディオン。

アコーディオン楽師のイグナシオが、妻を失い、伝説のアコーディオンを師匠に返すために旅に出る。フェルミンという若者が慕ってついてくる。道中にこの地方の都市であるバジェドゥパルや沼地(シエナガ)を通過する。

主役を演じたのは、本物のバジェナート歌手。

設定は1968年。この年、バジェドゥパル(セサル県の都)で第一回のバジェナート音楽祭が開かれ、劇中のイグナシオも参加する。

風景がとても美しい。横長の画面を目一杯使って、色鮮やかなコロンビアの自然はこの映画の中心的主題だ。

もう一つの主題はその風景とともに出てくるこの地方の先住民やアフロ系文化である。言葉も多様で、特にグアヒラ半島のワユー(Wayuu, Wayú)なども聞こえる。

監督のインタビューを読んで、なるほどと思ったのが、コロンビア北部のクリシェを避けているところだ。

この地方の文化を広めたのは小説家ガルシア=マルケスと音楽家ラファエル・エスカローナだが、監督はそれらを思いださせる道具を一切使わない。

黄色い蝶々は飛ばないし、エスカローナの名曲も流れない。

この監督はその後、コロンビア・アマゾンを舞台に『El abrazo de la serpiente』を撮っている。去年の秋、京都の映画祭で上映されている。トレイラーはこちら

その時は『大河の抱擁』という邦題だったが、この10月、ロードショーで公開されるにあたって、『彷徨える河』になった。

日本の公式サイトはこちら。監督名はシーロ・ゲーラになっている。

『風の旅』に関する未読のものとして、監督インタビューはこちら。映画評はこちら

コロンビアのアコーディオンものとしては、『El acordeón del diablo(悪魔のアコーディオン)』というドキュメンタリーがある。2000年の製作。 見た記憶があるのだが、思い出せない。

[この項、続く]

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