2016年9月21日水曜日

リチャード・ライトとスペイン語圏

アメリカの黒人作家リチャード・ライトについて、この前、ある研究会で発表を伺った。

全く予備知識がなく、自分の領域とどう関連付けられるだろうかと思っていて、その後この作家に興味が生まれたので、本を探してみたら、なんと以下のような本があった。

リチャード・ライト『異教のスペイン』(石塚秀雄訳)、彩流社、2002年

ライトがスペインを訪れたのはフランコ時代の1950年代の半ば。1908年生まれのライトが40代に入ってからのことだ。

読み始めて驚いたのが、彼はアルゼンチンにも一年ほど住んでいた。

『アウトサイダー』(1953)を論じた木内徹さんという方の論文によれば、1949年10月から1950年7月まで、『アメリカの息子(Native Son)』(原作は1940)の映画製作に参加している。

映画ではライトが自ら小説の主人公を演じている。Youtubeにあった。こちら。1951年のもの。

映画はスペイン語では『Sangre negra(黒い血)』。製作はArgentina Sono Film。

監督のピエール・シュナル(Pierre Chenal)はベルギー人(ユダヤ系)だが、第二次世界大戦の時、辛くもアルゼンチンに脱出した。それが1944年。現地で助けてくれたのが、アルゼンチン映画人のルイス・サスラフスキ(Luis Saslavsky)。

シュナルはアメリカから数十人の黒人俳優を呼び、アルゼンチンで初めて英語の映画が製作された。

シュナルを助けたサスラフスキは、アルゼンチン作家で雑誌「Sur」の編集をやっていたホセ・ビアンコの小説『Las ratas』を映画化した人物である。

いや、それよりも、エスタニスラオ・デル・カンポの『ファウスト』を映画化した人というべきか。『ファウスト』については、『序文つき序文集』にボルヘスが書いたものがある。

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