アルゼンチンのコルドバで2015年4月8日から10日まで、カリブに関する国際学会が開かれる。
主催はアルゼンチンのラプラタ大学とコルドバ大学。
大会のURLは以下のとおりで、現在発表者を募集中。
http://ahbx.eu/ahbx/?p=8195
テーマ別に9セッションに分かれていて、発表者はセッションを第2希望まで選んで申し込む。
セッションのコンセプトを日本語で解釈してみた。
第1セッション:カリブの表象(Imágenes del Caribe)
歴史、文学、文学批評などで、カリブがどのように表象されてきたのかについてを考える。
→文学研究者や表象系の人が発表するとしたらここ。
第2セッション:試論の場としてのカリブ(El Caribe, un ensayo de ideas)
カリブ論の検討がメイン。
→グリッサン、クレオール論など思想的な観点でカリブを論じている人向き。
第3セッション:歴史から見たカリブ
植民化、奴隷制、プランテーションなどカリブに共通する歴史経験を中心に考える。
→歴史学者や経済学者など社会科学的観点からカリブを見ている人はここか。
第4セッション:フランス語圏カリブ
その名の通りハイチやマルチニーク、グアドループ、仏領ギアナなどフランス語圏カリブについて。
→文学でもOKなので、マリーズ・コンデの研究している人などはここにいける。
第5セッション:英語圏カリブ
第四セッションと同じで、英語圏カリブなら何でも。
第6セッション: カリブの文学的伝統についての読みの系譜
ここはややわかりにくい。 セッションの説明にはこのようにある。
「カリブ文学は、大陸他地域の文学と間ディスクール的、間テクスト的な結びつきを有し、共有する想像性(un imaginario compartido)に基盤を置いた文化的共同体を形成してきた。このセッションでは、カリブの文学的伝統の正統性に貢献した読みの系譜と行程を検討し、以下のプロセスを分析する。移住、主題の移転と変容、戦略、方法。」
ここでは移住(migración)だけが具体的に見える。セッションの説明にはさらに続く。以下のような項目を検討するとのこと。
・20世紀の終わりから21世紀初頭のカリブ文学の伝統の創造、選択、形成、変容プロセス。
・カリブにおける(あるいはカリブの)文学的キャノンの読み、脱構築、読み直し、再定義プロセス。
・新しい伝統の構築と正統化における未来性(futuridad)の系統、ジャンル、装置。
・カリブ文学のアーカイブ、コーパス、レパートリーと、他地域の文学との結びつき。
・文学的伝統と、パフォーマンス、ビデオ芸術、テクノ詩のような芸術的実践の交差。
→カリブの文学的伝統というのがどういうものなのか、ぱっとは浮かばない。
カリブ文学がどのように語られてきたか、何をカリブ文学としてきたのかについて、つまり「カリブ文学」の表象を検討するということであれば、なんとなく分かるような気がする。
「大陸他地域」とあるのは、アメリカ大陸であると考えていいので、《新大陸の文学》と《カリブの文学》のディスクールに共有するものがあり、そこから浮かび上がる《文化的共同体》。そのような共同体があることを前提として、ずれている部分を浮かび上がらせるセッションだろう。文学以外の芸術形式に関する研究も入っている。テクノ詩!
第7セッション:カリブという領土性[縄張り](Territorialidades del Caribe)
「カリブ文学を省察するために、比較的静的な空間性を許容していた概念があったが、昨今のエクリチュールはそれらの概念を問題化している。とくにこれらのエクリチュールは、枠組みとしての(20世紀半ばごろに構築された)ラテンアメリカ主義という広大な企図によって引かれる線から外れている。ラテンアメリカの神話的都市(ハバナ)や島嶼主義(insularismo)というような想像的空間はとくに、昨今の美学的企図においては砕け、壊され、散種している。」
・崩壊した都市の形式(Formas urbanas disruptoras):都市、周縁、スラム、非場所。
・廃墟、タトゥー、重ね書き羊皮紙(パランプセスト)。島という身体を現在から再記述すること。
・散種された島。 21世紀のカリブ・ディアスポラのエクリチュールにおける島嶼主義の再検討。
・ 多様な、断片化された領土性と時間性。緊張と争い。
・他の芸術(映画、絵画、音楽)と文学との対話における現在の領土性
・ 現在のカリブ文学の検討。移住性、超国家性、潜在性という文脈における概念規定のリスク。
→このセッションはかなり理論的である。島や都市を歴史のパランプセストとして読む、あるいはカリブを廃墟、スラム、非場所としてとらえる動きは昨今急速に進んでいる。
第8セッション:文学と革命
文学と政治をテーマにして、作家や知識人とキューバ革命とのかかわりをさぐるもの。
→とくに「カリブ」という概念を考えるセッションではないが、キューバ革命を人文的な知がどのようにとらえてきたかを見直すのが主眼のようだ。
第9セッション:現代カリブ文化における亡命、ディアスポラ、境界。
移動の方法であるディアスポラや亡命は、(カリブ文化を描く)題材となるだけでなく、移動性、意味の交差、多様性を刻印された文化を形作っている。
・境界概念の問題化
・旅の詩学
・中心/周縁の関係
・帰還という神話
・文学、言語、国家の関係
→このセッションも理論的で、特定の固有名詞を論じる発表には向かないと思われる。
以上、9セッション。
発表希望者は要旨(300語)を2月16日までにcongresocaribe2015@gmail.comまで。
海外からの参加者はUS100ドルが必要。
発表言語の指定はないが、おそらくスペイン語。ポルトガル語もOKだと思う。
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