亡命キューバ作家イバン・デ・ラ・ヌエスはエル・パイース紙に「プロスペローとキャリバンーー驚きの章」と題する文章を発表した。
内容はキューバとアメリカ合衆国の国交正常化交渉について。掲載は2014年12月21日付け。
http://internacional.elpais.com/internacional/2014/12/20/actualidad/1419113292_523818.html
以下はその簡単な要約。
カリブの作家たちは、シェイクスピア『テンペスト』のプロスペローをアメリカ合衆国、エアリアルをヨーロッパ、キャリバンをキューバに割り振ってきた。
その構図で見ると、冷戦下プロスペローとキャリバンは対話不能だったが、エアリアルたるヨーロッパが、キューバのとりうる適切な未来モデルを提示する役割を果たしてきた。
その未来モデルとはヨーロッパが経験した、ソビエト化、スペイン民主化、ポスト共産主義ショック、社会民主主義の隆盛(フランスのミッテラン、スペインのフェリペ・ゴンサレス、スウェーデンのオロフ・パルメ)などだ。
ところが今回の動きはエアリアルの振る舞いをすべて無に帰した。
「『テンペスト』の三角関係に変更を加え、対話の不可能な二人、プロスペローとキャリバンに通訳者なしで会話をさせる決定」が下されたのだ、とイバンは言う。
従来の脚本では、国交正常化交渉はいちばん最後の場面として書かれていた。まずは複数政党制による選挙、経済封鎖の停止、そして国交正常化という順番だった。逆からはじまったこの劇は、今後、脚本なしの劇になる。
キューバとアメリカ合衆国では「人権」も「民主主義」も意味が違う。この会話が成り立つのかどうか。
今後はグアンタナモ基地の返還や、亡命キューバ人・反体制派が島の内部に生きていく場所があるのか、が問題になる。
だが、少なくともこの交渉はいい知らせだと受け取っている人が少なくない.......。
おおむね以上のような内容。イバンはいい知らせだと受け取りつつも、かなり慎重だ。
やはりスペインに亡命しているキューバ人としては、仲介者としてのエアリアル(=ヨーロッパ)に期待するところがあったのではないか。
その期待は挫かれ、プロスペロー(=アメリカ)との直接対話に持ち込まれたことに不安を感じ取っている(と、私は思う)。
イバンは、サルトルにも言及して、彼がキューバはアメリカ離れをしてフランス化するべきだと考えていたことを好意的に見ている。
やはりキューバがヨーロッパ抜きにアメリカ化していくことへの不安がイバンにはありそうだ。
キューバが対外関係を構築するとき、アメリカが前面にでてくるのなら、結局1898年の米西戦争後のプエルト・リコ領有と同じことになるのか。
米西戦争後のパリ条約にはアメリカとスペインが出たが、プエルト・リコもキューバも呼ばれなかった。
今回、ロシアはどうするのか。まさかロシアと米で調印することにはなるまいが。
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