2021年7月15日木曜日

セサル・M・アルコナーダ『タホ川』/7月15日

セサル・M・アルコナーダはスペインの作家。1898年に生まれ、1964年没。ロルカやブニュエル、ダリと同世代だ。ちなみに生誕年は、下の『タホ川』の序文では1900年になっている。

若い時からジャーナリズムの世界で多くの雑誌に関わった。音楽や映画への関心も高く、ドビュッシー論で一冊本を書いている(1926年)。ウルトライスモの時代でもあって、1929年の『グレタ・ガルボの人生 Vida de Greta Garbo』にはその影響が見られるという。ちなみにこの本はここですべて閲覧可能。

1931年共産党入党。スペインにおける社会主義リアリズムの代表的作家になる。関連する文芸誌に寄稿したり、テスティモニオ風の小説を書いたり。

1938年、『タホ川』を書き上げるが、出版されたのは1970年のモスクワである。スペイン内戦の人民戦線の大義を称賛した叙事詩的作品とのこと。

アルコナーダは1939年、人民戦線敗北で亡命する。いっとき、フランスの強制収容所にセルバンテスの本を持って入った。同じ年にモスクワに移り、そこでも文芸誌に関わる。ソ連にはスペイン研究者にして翻訳者のFedor Kelinがいて、活動をともにした。おそらくこの人物とは1935年、パリの国際作家会議で知り合ったものと思われる。

モスクワでは『スペインは無敵である España es invencible』(1941)や、『マドリード短篇集』(1942)を出したり、ロシア文学の翻訳も手がけた。1964年モスクワで亡くなった。

日本語で彼に関する言及はほとんどないと思われるが、パリで開催された、その1935年の第1回文化の擁護のための作家会議に出ていたために、以下の本に1箇所発見できた。

『文化の擁護 1935年パリ国際作家大会』法政大学出版局、1997年。

 この本には詳細な人名リストがついていて、スペインからはバリェ・インクランとラファエル・アルベルティが出ている。そして「アルベルティが不在の時はアルコナーダが代わりを務める」(p.656)とある。アルコナーダに関する貴重な言及ではある。

しかし残念なことに、この会議におけるスペイン側の報告は、バリェ・インクランの報告もテキスト未発見、スペイン劇作家グループのテキストも未発見とあり、スペイン側の報告は載っていない。

ちなみにこの会議には、キューバからはフアン・マリネーリョ(Juan Marinello, 1898-1977)が出ている。彼も当時のキューバの知識人で前衛雑誌「Revista de Avance」に関わっていたし、共産党員だった。

 


César M. Arconada, Río Tajo, Akal Editor, 1978, Madrid.

Akal出版(Akal Editor)とは、ラモン・アカル・ゴンサレス氏(1940-)が作った出版社。


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7月14日、直木賞受賞作に「テスカポリトカ」(作者は佐藤究さん)とあって、おや、メキシコ?と思ったらそうでした。これは読んでみたい。

7月15日付の朝日新聞に、加藤陽子氏のインタビューが載っています。鋭い指摘がたくさんありました。

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