キューバ人が世紀をまたいで出していた文芸誌『ディアスポラ(ス)』のファクシミリ版。
Revista Diáspora(s): Edición Facsímil(1997-2002), Literatura cubana, Jorge Cabezas Miranda(Ed.), Red ediciones S.L. 2013.
1997年から2002年まで、合計8号が出た文芸誌。200部くらいの少部数の発行だったようだ。このような、非公式独立系の文芸誌があの時代に出ていたとは。
書き手は1959年以降が中心で、アントニオ・ホセ・ポンテやホセ・マヌエル・プリエトも書いている。
その上、リカルド・ピグリアのゴンブローヴィッチ論が入っていたり(2001年3月、6号)。
このファクシミリ版は全体が700ページ近いが、冒頭の170ページは編者の序文、関係者の論文、書簡、エッセイ、証言、インタビューなどで占められている。
1995年の秋、島内外のキューバ人を招いた「文学会議」が企画された。会議の開催場所はマドリードだった。
1年前の1994年、同じマドリードですでに第1回目の文学会議が催されていた。会議の名称は「La isla entera(島全体)」。しかし1995年に予定されていた第2回目は延期され、そして中止になった。
この経緯をめぐる当事者(アベル・プリエト、当時UNEAC代表、その後文化大臣)の公開書簡、それに対する作家の応答などが載っている。
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公開されたばかりの『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ・アディオス』を見てきた。トレイラーはこちら。
(以下は内容に触れています)
第1作のメイキングっぽいところはあるけれど、キューバ音楽アーカイブ・フィルムとしても見ておくべき映画。パート1に対する応答映画にもなっている。
パート1が冷戦終結後のつかの間の平和時に撮られたとすれば、このパート2もまた、キューバ・米国国交正常化からトランプ就任前までの、つかの間の平和が大きな主題になっている。それを演出するのが黒人大統領オバマである。オバマがキューバ人を「ブラザー」と呼ぶ背景にはブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブがあったのだ。
冒頭(フィデルの死、2016秋)からクライマックス(オバマのキューバ訪問、2016春。オバマによるホワイトハウスへの招待、2015秋)までの時間の流れの矛盾がこの映画の面白いところだ。
実はこのクライマックスはすでにYoutubeで公開されている。公開元はThe Obama White House。
歴史というものは、時間において後退しながら前進する。映像も小説もそれを可能にする。
「パート1」の成功によって「パート2」が生まれたものの元祖は『ドン・キホーテ』だが、本作にも『ドン・キホーテ、パート2』のもつ物悲しさがある。タイトルにもある通りだ。
と言ってもキューバ音楽は永遠に終わらないはずで、エンドロールに終わりがこなければいいと思った。
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