短篇「来る途中」(Viniendo)の冒頭、ほんの数行だけ引用しておく。
「彼のルームメイトはオデッサから船に乗ってハバナに戻る方法を選んだ。考えられるかぎり、最も長い道のりだった。ルームメイトは国外にいる時間を引き延ばせば、旅の途中、海のどこかで、戻ることに何かしらの意味が見つかると思っていた。
『帰り着く前に、たぶん遭難するよ』荷造りが終わって、ルームメイトは言った。『そうなったら、ちょっとした幸運だ』
彼は学生寮の部屋で独りになった。
寮は少しずつ空っぽになっていき、ついにアラブ人とキューバ人だけの小さなグループだけが残り、彼らはロシア語で話すのをやめ、それぞれの言葉に逃げ込んだ。
(中略)
『流刑だな』と、彼は昨夜眠れずに思った。『ロシアに残るべきだった』
しかし方法がなかった。」
留学先のソ連で、キューバ人はソ連崩壊に立ち会う。キューバ人にとって、それはある程度、祖国の崩壊を意味する。この物語はそのときのキューバ、キューバ人の「さまよい」を主題にしたものだ。
国などというものが永遠にあると思っている人がいるが、そうではない。
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