2015年4月23日木曜日

キューバのソ連時代[4月24日追記]



キューバに関する文献が届いている。

「Revista Iberoamericana」243号はキューバ、ドミニカ共和国などの文学が特集。Gustavo Perez-Firmat, Rafael Rojasなどの名前がある。

 そのなかで、特にいま気になったものは以下の論文。

Damaris Puñales-Alpízar, "Soy Cuba, Océano y Lisanka: De lo alegórico a lo cotidiano. Transformaciones en las coproducciones cubano-soviético-rusas", Revista Iberoamericana, 243号(2013, abril-junio).

 これはキューバとソ連の合作映画に関する研究論文で、3本の映画が分析されている。『Soy Cuba』, 『Océano』, 『Lisanka』である。

『Soy Cuba』は日本語の字幕がついたものも売られている(確か)1960年代の映画で、これは革命プロパガンダ映画であり、しかも芸術性も高い貴重な映画だ。残りの2本は21世紀に入ってからのもので、未見である。現地に行かないかぎり、簡単には手に入らないのではないか。

 『Soy Cuba』について、それなりに書かれているので参考になる。

 近年、キューバのソ連時代(こういう言い方でいいのかどうかわからないが、ついそう言いたくなる)についての研究が盛んに行なわれている。

 そのなかの文献で必読は以下のもの。

 Jacqueline Loss, Dreaming in Russian: The Cuban Soviet Imaginary, University of Texas Press, 2013.

とくにこのなかの第3章では、ソ連経験のある作家の小説作品を中心に論じられる。

 そして、ロシア経験のある作家のなかでも、ホセ・マヌエル・プリエトJosé Manuel Prietoの存在を際立たせている。

 1962年ハバナ生まれ。シベリアの首都と言われるノヴォシビルスクで技術系の勉強をする。合計で12年間ソ連に住み、その後メキシコシティへ移っている。

 この作家のことは前から調べていた。彼の作品で重要なのは以下の2冊だと言われている。

Livadavia, Mondadori, 1999.

Rex, Anagrama, 2007.

 そこへきて、以下のタイトルのものが見つかったので注文しておいたら届いた。

 Treinta días en Moscú(モスクワでの30日), Mondadori, 2001.

 タイトルからして、プリエトがソ連にいたときのことを書いているのかと思ったら、どうやらそうではなさそうだ。2000年の7月に一ヶ月滞在したときのことらしい。

 これを見て、ハッと思い出した。先日メデジンで会ったエクトル・アバッド・ファシオリンセの『オリエントはカイロに始まる』の執筆経緯である。

 出版社のオファーである都市に滞在して、その都市を書くという企画ものだ。エクトルは東京かカイロかを迷ってカイロを選んだ。

 ホセ・マヌエル・プリエトはこの企画に乗って、かつて自分が住んだロシアからモスクワを選んだのだ。

 ちなみにサンティアゴ・ガンボア(コロンビア)は北京を選んで書いている。

 推測だが、プリエトは、ベルリンの壁崩壊以降のソ連を見ようと思って、モスクワを選んだのではないか。

 ホセ・マヌエル・プリエトはまとめて読みたい。どうしても読みたい。

 さらにもう一冊届いた。

 Ariana Hernández-Reguant(ed.), Cuba in the special period: Culture and Ideology in the 1990s, Palgrave macmillan, 2009.

 これをめくっていたら、目次に以下の論文があった。

 Jacqueline Loss, "Wandering in Russian"

先にあげたキューバのソ連時代の研究書の著者の論文だ。タイトルもとてもよく似ている。本のほうは「ロシア語で夢を見る」で、こちらの論文は「ロシア語でさまよう」である。

 こうしてつながった。

 さらにもう一冊届いた。

Holly Block(ed.), Art Cuba: The New Generation, Harry N. Abrams, Inc., 2001.

 先日どこかで触れた、カルロス・ガライコアの作品なども収録する美術書である。このなかには、Tania Brugueraというこのまえハバナで一時的に拘束されたパフォーマーも含まれている。

[追記]

 上の文章を書きながら、もう一冊キューバのソ連時代の本があったはずだと思っていたが、見当たらなかった。調べてみたらKindle版でもっていた。

 編者はなんとJacqueline LossとJosé Manuel Prietoの二人だった。

 Cavier with Rum: Cuba-USSR and the Post-Soviet Experience, Palgrave macmillan, 2012.

 
 

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