2023年4月19日水曜日

4月19日 ホセ・レサマ=リマ『パラディーソ』書評(「図書新聞」)

ホセ・レサマ=リマ『パラディーソ』(旦敬介訳、国書刊行会、2022年)の書評を「図書新聞」3588号に書いた。

手元には『パラディーソ』のスペイン語版は2種類ある。

José Lezama Lima, Paradiso, Cátedra, 2017(初版1980). 



このカテドラ版はソフトカバーで持ち運びにはいいし、序論もあるし註もいいのだが、どうにも文字が小さすぎるのが難点。持ち運ぶには大きいけれども、目にやさしいのは以下の「ユネスコ版」。

José Lezama Lima, Paradiso, ALLCA XXe, Nanterre, 1988. 



解説がキューバの批評家シンティオ・ビティエルで、巻末に資料(書簡など)がまとまっているし、大変に役立つのは、章ごとの「まとめ」というか「解説」がついていること。また本文には行数が10行ごとに振ってあるので、読書会や授業で使うならこちらが圧倒的にいい。

それから英訳。

José Lezama Lima, Paradiso(translated by Gregory Rabassa), Dalkey Archive Press, 1974. 





日本語版には詳細な家系図がついているが、それと比べるとかなり簡単な家系図がついている。ないよりはましか。

手元のレサマ関係論文では、Enrico Mario Santí, Bienes del siglo: sobre cultura cubana, FCE, 2002.や「Casa de las Américas」のレサマ特集とかキリがないほどあって、今回書評を書くのにあっちこっちから引っ張り出した。もっともどれもキューバ文学(史)視点のものばかりだから、より広い文脈で読みたい人には参考にならないかもしれない。

それからハバナという街と小説のことを絡めたエッセイであるアントニオ・ホセ・ポンテ「La Habana de PARADISO」(Antonio José Ponte, Un seguidor de Montaigne mira La Habana所収)。

そうそう、『パラディーソ』は日本語で翻訳が出る前から原書で少し読んでいたにもかかわらず、あることに気づかなかかったのは、まったく鈍感というか、本当に読んでいたのか自らを疑いたくなる。

それはキューバ文化関係のウェブマガジンとして有名で、よく見に行くrialta.orgのサイト名「リアルタ」のことだ。このリアルタこそ、『パラディーソ』の重要登場人物リアルタ(Rialta)からとられていたのだったなあ。

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