朝鮮戦争に従軍した作家エミリオ・ディアス・バルカルセルの短編集。すべて朝鮮戦争もので9篇が入っている。前にタイトルだけ触れた「El regreso(帰還)」も入っているが、かなり有名な「El sapo en el espejo(鏡のなかの蛙)」はここには入っていない。
Emilio Díaz Valcárcel, Proceso en diciembre, Taurus Ediciones, Madrid, 1952.
プエルト・リコ兵士ロドリゲスは休暇で日本の大阪を訪れ、カズコという女性としばらく過ごし、それが甘美な思い出だ。プエルト・リコに戻る前にもう一度会おうと思っている。「俺は戦争に戻らないといけないんだ、カズコ。俺を待っててくれ。6ヶ月経ったら……」(p.47)
「じっさい、外見上では韓国人と日本人は驚くほど似ていると思う。しかし俺は完璧にそれぞれの言語を区別することができる。日本語は短く断定的だ、命令をするために作られたかのような言語だ。韓国語には甘い響きがある。歴史を通じ、少なからず辱めをうけた民族に特有の言語のように思える。急にある考えが浮かんだーー韓国人の従順さは(少なくとも俺は彼らの中にそれがあると思っているが)プエルト・リコ人の従順さと似ている」(p.29)。
メインストーリーは、髭を剃り落とすよう上官から命じられ、それに従わないことにある。彼にとっては髭は誇りであり文化そのものだから反抗する。切り落とす羽目になった時、「去勢された」と感じる。米軍に所属しているので命令を拒否できないのだが、やはり朝鮮戦争に参加していたトルコの兵士は髭を生やしている。ギリシャやベルギー、コロンビア兵は志願兵なのに……とも(p.106)。
フェリペ・ソラーノの『Cementerios de neón』では、21世紀のコロンビア人が韓国文化と一体化して(さらに極右グループにも近づいて)、北朝鮮を倒そうとしている。この男をソウルで探すのが、半世紀以上ぶりにソウルに戻った帰還兵のコロンビア人。重要な場面になると階級バッジをつける。ディアス・バルカルセルの短篇では、売春宿を訪れたプエルト・リコ兵は階級バッジを見せつける(p.91)。
韓国人の女と関係を持ち、一緒にアリランを歌うプエルト・リコ兵士。韓国人兵士と友情を結んだが、その後、お互いにできない英語でコミュケーションが取れず、仲違いしてしまったプエルト・リコ兵士。怪我を負って帰還したために、恋人と結婚できない兵士。
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