ハイチとドミニカ(共和国)のあいだには川が流れている。この川に一体どれくらいの数の死体が流れたのか、まだわかっていない。1728年に虐殺があって以来、「虐殺の川」と呼ばれている。
1937年に起きたドミニカ人によるハイチ人虐殺事件(パセリの虐殺と言われる)は、日本語では以下のハイチの作家の2冊の本で語られている。
エドウィージ・ダンティカ『骨狩りのとき』(佐川愛子訳)、作品社、2011年。
ジャック・ステファン・アレクシス『太陽将軍ーーめざめるハイチ』(里見三吉訳)、新日本出版社、1965年。
✳︎日本語訳本の作者表記は、「ジ・エス・アクレシ」だが、他の文献などで使われている表記を使った。
ドミニカ共和国側の本はないかと思っていたのだが、ひょんなことから手に入った。
フレディ・プレストル・カスティーリョの『虐殺の川は歩いて渡る』という本である。もちろん日本語訳はない。
Freddy Prestol Castillo, El masacre se pasa a pie, 1973.
作者のプレストル・カスティーリョは1913年生まれの弁護士、作家。1981年に亡くなっている。1937年、判事としてハイチとの国境に赴任していた。その時の経験に基づいて書かれた証言小説(Novela-Testimonio)である。
序文によると、書き上げたものの、トルヒーヨ時代に公開はできず、他人に託したりしていたようだ。
この本を読んでみようと思ったのは、英語版がデューク大学出版からちょうどこの5月(2019年5月)に出版されたのを知ったことも大きなきっかけである。訳者であり、詩人でもあるマーガレット・ランダルさんの名前をつい最近どこかでみたような気がするのだが、これが思い出せない。さてどこでだったのだろうか?彼女のウェブサイトを見てもわからない。
Freddy Prestol Castillo, You can cross the Massagre on foot, (translation, Margaret Randall), Duke University Press, 2019.
ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(都甲幸治他訳)でも、バルガス=リョサ『チボの狂宴』(八重樫克彦他訳)でも、この虐殺は言及される。他にもフリア・アルバレス『蝶たちの時代』(青柳伸子訳)がある。
これだけのものがあるとなれば、以下の本を参考にして、「パセリの虐殺」の日本語証言集の編纂をしてみようと思うのだが。
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