2016年1月7日木曜日

麻薬密売[1月12日、8月31日追記]

メキシコの麻薬密売については、映像や文学、テレビを通じてエンターテインメント化されている。

そういえば、映画『皆殺しのバラッド』の原タイトルはNarco cultura(ナルコ・クルトゥーラ:麻薬の文化)で、最近では「Literatura del narco(麻薬取引を主題とする文学)」という用語もあったりする。(「ナルコクエントス narcocuentos」[麻薬関連短篇集]という短篇集もある。)

いまから10年くらいまえ、コロンビア人と話しているときに、麻薬取引を主題にした文学作品は大きなジャンルをなし、それは研究に値すると言っていた。

メキシコものの流行と関係があるのだと思うが、最近パブロ・エスコバルについての物語がやたらと出ている。

映画『エスコバル:楽園の掟』が公開間近であると思っていたら、アメリカではすでに公開済みである。ベニチオ・デル・トロがパブロ役を演じている。日本でも2016年上半期に公開されているが見逃した。

Netflixのオリジナル作品である『ナルコス』はフィクションと断っているが、エスコバル本人の映像まで出てくるので、ノンフィクションと言っていいのではないか。こちらはブラジル人のヴァグネル・モウラがパブロ。

さらに、これもNetflixで、『Los tiempos de Pablo Escobar(パブロ・エスコバルの時代)』というドキュメンタリーがある。

全部見たわけではないが、エクトル・アバッド・ファシオリンセ(作家)、フアン・ゴサイン(ジャーナリスト)、カルロス・ガビリア(元大統領) などが80年代、麻薬カルテルが出て来たころのメデジンについて証言し、また映像ではエスコバルらの当時の様子が紹介される。

かつて、コロンビアの麻薬ものの本では、『キング・オブ・コカイン』という2巻もののルポがあった。あるいは『パブロを殺せ』か。読んでいると気が重くなって飛行機に乗りたくなくなってくる。

そんな時代が終わってほっと一息ついたと思ったら、エンターテインメントとしてこんなによみがえってくるとは。この話題をラテンアメリカ研究者と話してみて、意見が一致したのは、作り手はどこかパブロ時代にノスタルジーを抱いているということだ。

実際、パブロがいたころのほうが景気がよかったというような話は聞いたことがある。

こういう「あの頃はよかった」的な過去のとらえかたは、ものすごく感染力が強いので、ついどんなことにでも同じように適用してしまいかねない(だから注意したい)。

「Aquellos tiempos(あの頃)」と来たら「よかった」となる決まりなどないはずだ。

あの頃は最悪だった。

(この項、続く)

[1月12日追記]

その後、Netflixのプログラムを見ていたら、「パブロ・エスコバルーー悪魔に守られた男」というドラマもあった。これはコロンビアのテレノベラ「Escobar, el patrón del mal」。

[8月31日追記]
ベニチオ・デル・トロがパブロ・エスコバルを演じる『エスコバル:楽園の掟』を見た。原題は「Escobar: Paraíso perdido」。イタリア人Andrea Di Stefano監督。

カナダ人のサーファー(ニック)がコロンビアに遊びに来て、恋人ができるが、それがエスコバルの姪にあたるという設定。

ニックの視点からエスコバルが語られる。ニックは躊躇しながらもエスコバルと親しくなっていくが、最後には裏切られる。

エスコバル(ベニチオ・デル・トロ)は、映画のど真ん中に出てくるというよりは、ニックの怯えによって常に暗い存在を感じさせるという役割。

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