2014年4月にガルシア=マルケスが亡くなったあと、雑誌の『ユリイカ』が特集号を計画した。そのとき、エクトル=アバッドが新聞に寄せた追悼文を翻訳することを思いついた。彼のブログに転載されていたのを読み、翻訳するにふさわしいと思ったからである。
編集部からエクトル=アバッドに連絡が行き、彼は快諾してくれた。そのころはベルリン自由大学に招かれていたが、その後、メデジンに戻っている。
ベルリン滞在中に仕上げたのが、最新作『ラ・オクルタ La Oculta』ということだ。8年ぶりの小説である。
題名のラ・オクルタは牧場の名前で、メデジン郊外の設定らしい。
彼の作品に、カイロ滞在記をもとにして書かれた『オリエントはカイロにはじまる』(2002)というのがあるが、この本は出版社の企画だったということを教えてくれた。ある都市を選び、その都市をめぐって書くことを条件に、滞在費用は出版社がもってくれる。
彼は東京とカイロを候補としたが、滞在期間が長くとれるのがカイロだったので、東京はあきらめた。
そのとき彼が東京を選び、東京について小説を書いていたらどうなったのだろうか。
アルゼンチンのオリベリオ・コエーロ Oliverio Coelho(1977〜)は韓国に長期間滞在して、短篇を書いている。おそらく韓国滞在中に東京にも来たのだろう、東京が舞台の作品もある。
エクトル=アバッド・ファシオリンセの代表作は『El olvido que seremos』(2005)で、父をめぐる物語。
この作品の英訳者は、カナダ人のスペイン語文学翻訳者Anne Mclean。フアン・ガブリエル・バスケスの『物の落ちる音』を訳したり、コルタサルやハビエル・セルカス、エンリケ・ビラ=マタスなどを訳している有名翻訳家である。
彼女を含め、何人かのスペイン語文学翻訳者が一堂に会するシンポジウムが、今年の9月にメデジンで開催されるとのこと。行ってみたくて仕方がないのだが……
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